「人のおかず取ってんじゃねぇよ」
――春もうらら
桜は満開
桜吹雪が舞い上がるというより砂ぼこりの舞う春は
「あー風強ー。誰だよ屋上で弁当食おうなんて言い出したのは」
育ち盛りの少年たちにとって少しも腹の足しにならない
「だって天気いいのに教室じゃもったいないじゃないですか」
「おかず砂まみれになる方がもったいねーっつの!」
「あ、じゃあボクのサンドイッチから好きなのとってくださいよ」
そういう髪の長く一見女性に見える優しい彼は松岡春
「要なんかに必要ないよ春。ちゃんと自分で食べなさい」
前髪を真ん中で分けているのが双子の兄浅羽悠太
「要ボンボンでしょ。おかずの一つ二つで何さわいでんの」
前髪を伸ばしっぱなしなのが双子の弟浅羽祐希
「いちいちつっかかってくんな双子。俺はお前らの巻き添えくらうっつーのが腹立つんだよ」
そしてさっきからぐちぐち文句を言っている眼鏡が塚原要
「大丈夫だよ、要の眼鏡に砂溜まって前なんか見えちゃいないから。おかずがどうなろうが気付きっこ無いよ」
「そう言いながら人のおかず取ってんじゃねぇよ」
最後に、要のおかずを盗んだ私はみょうじなまえ
皆幼稚園の時からの親友ですっ!
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