3月上旬 後

赤井に連れてきたもらった病院はかなり久しぶりに来た。途中の街並みなどは殆ど変わらず、相変わらずの様子だった。
俺も眠り姫に会ってもいいか?と表情を固くした赤井が僕をじっと見つめる。え、はい。どうぞ?と返し、案外そういう所もあるんだな…としみじみ思わされた。

「積もる話もあるだろ?俺はエレベーターの方のベンチにいるから終わったら声をかけに来てもらっていいだろうか?」

「ええ。多少長くなってしまうと思いますが、そこは別にいいですよね」

赤井の返事を背にして僕は彼女の病室のドアをノックする。返事はないが遠慮なく開けてベッドを見た。そこには横になってこちらを見ている僕の大好きな名前の姿がある。僕はゆっくり彼女を覗き込んだ。

「おはよう、お寝坊さん。僕を一年も待たせるなんてできるのは名前くらいだよ?」

「無理に起きようとしないで。今は横になったままでいいからさ、」

「うまく声が出ない?それはそうだよ、もう少し我慢して。暫くは読唇術での会話だね」

「あ、そうだこれ」

僕は鍵をかけた引き出しにしまっていた今まで作ってきたアクセサリーを出して名前に見せた。
彼女の目に涙が溜まりキラキラと光る。それを拭ってキスをする。一年ぶりの名前の唇はカサついていたが全く気にならない。暖かくて、柔らかくて、とても幸せな気持ちになる。

「嬉しいって?喜んでもらえてよかった」

「花言葉?知らないよ?」

「え、教えてくれないの?わかった自分で調べるよ」

「名前に会いたいって奴がいるんだ。連れてくる」


「会いたいって言ってたFBIの犬で赤井秀一」

「君が降谷君の眠り姫か。彼が顔を覚えられてしまうのを承知で通いつめるものだから、どんな女性かと思えば花が良く似合いそうな綺麗な人だ」

「口説いてるんですか?やめてもらえます?あと余計なことを言わないでください!」

「なるほど、」

「あ、名前余計なことを言うなって!」

「お幸せに、な」

 
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