逐電


「もうこんな時間か…私はうそろそろ帰ろうかな。僕はお家に帰ったら早く寝るんだよ?あ、そうだこれあげる」

「飴?」

「そう。みかん味!嫌いだった?」

「ううんありがとうお姉さん」

「じゃあね僕」

大将にアンタならすぐいい男が見つかるからって励まされてお勘定をちょっと(かなり)安くしてもらった。なんだか申し訳ない。
道中いちゃつくカップルが目に入り、どう爆発させてやろうか考えたが時間の無駄なのでやめた。

マンションのエレベーターを降りて右見えるのは我が家の玄関には座る怪しい輩。まあ十中八九降谷零だろう。何事も無かったかのように引き返すがヒールの音が鳴ってしまった。降谷が立ち上がり、私は勢いよく走ってくる彼の方へ靴を脱ぎ捨て階段をダイナミックに駆け下りて右へ左へもう一度右、まだ追ってくるので右、左、左、右、右に走り抜け今は物陰に隠れて降谷が追ってこないことを確認している。
なんだアイツは…なんなんだ!?あんなことしておいてよく私の所に来れるなァ!!!!と思いながらいないことを確認してまた適当に歩き始めた。
家に戻れば多分まだ降谷がいるはずだ。遭遇なんか御免だね、と心の中で吐き捨て街灯に照らされる自分の足を見た。傷だらけで血が滲み始めている。さっきまでは痛みなんか感じなかったのにいざ見てみるとジクジク痛む。

「あの……なにかありました?」

「いや、別にどうという訳では……」

立派な家の門からする男の声に何もなかった風に返してその場を立ち去ろうとするが、男が門から出て来る方が早かった。電灯の下で照らされて身なりが酷く乱れ、足が血だらけの私を見た男は手当しますからと自分の背中に乗れと言う。確かに痛いので自分で歩きたくはないが、見ず知らずの人におぶられるのはもっと嫌だ。
頑なに嫌がると強硬手段と言わんばかりに担がれた。おい私は米俵じゃないぞ!!
手当はしてもらえるようなので暴れない方が身のためだと判断し、大人しく運ばれることにした。


  
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