嫌悪


「あー、私それパス。降谷サンにそう伝えてもらえる?」

「は、はい」

「もし理由を聞かれたらジンって答えて」

「ええ」

風見にそう伝えてデスクから立ち上がり、帰宅の準備をする。立つ暇もなかったからか身体中から嫌な音がするので、できる範囲で体を伸ばす。
デスクに並んだ瓶とマグカップを片付け、誰の目にも留まらないようその場を後にした。





「で、それを私にしろって?」

「ああそうだ」

「バーボンの仕事でしょ?なんで私が…」

「そのバーボンからの指名だ、喜べ」

「はあ?喜べるわけない。ふざけないで…」

「お前なら確実にやってのけるからっつー後押しもあるぜ?」

「ていうか拒否権なんか元からないんじゃない?」

「当たり前だ」

「ああ、もうわかった!!やればいいんでしょ?やれば!!はあ…もうやってらんない!!!今日はしこたま呑んでやるんだから!!ジン、勿論アナタ持ちでね」

「ッハ、いつもそうだろ?」

「ウォッカも呑みなよ。ジンの奢りだからさ、ねえマスター、私ライで」

「おい……」





どぎつい化粧に香水、正直趣味が悪すぎる。なんでこういう所はこんな女ばっかりなんだよ頭どうかしてるんじゃないか?
綺麗にドレスアップされた私が鏡に映って目を疑った。誰だこの女?あ、私か

「声に出てるわよ、シャトー」

「いや、ホント120%じゃない?これ私じゃないみたい」

「元はいい癖して化粧っ気がないからそう見えるだけ。これが貴女よ」

「そう?ベルにそう言われるとちょっと自信つくわ」

この仕事は本来バーボンやるはずだったものである。外せない用事と言って赤井秀一を炙り出しに向かったことなんてベルやジンなんかは当然知らない。ここで私を後押ししたのは多分怪しまれない為だろう。それにしてもよくこんなの引き受けてるな降谷サンは……

「私があの男をいい気にさせるようなことを言えばいいのね?」

「そしたらこの部屋まで連れてきて。私がここで情報を吐かせるわ」

「了解」


  
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