*未プレイにつきキャラ崩壊注意
*現代(学)パロ
*企画からお越しくださった方→Re name






シャーペンの芯が硬いと、紙との相性かなんかもあるだろうけど、書いたときになんかキュッてなる時ありませんか?

キュルキュル引きずって線を書くあの感覚、鏡をフォークで引っ掻くのと同じ位私は嫌いなんです。


その嫌いな感覚と紙の上でふんぞり返る呪文達と死闘を繰り広げた後、私のハートは綺麗に砕けましたとさ。めでたしめでたし。


「受験なんて爆発すればいいのに!!」

「今更何言ってるの、もう」


机に突っ伏すが間髪入れずに届いた声に「わあっ」と振り向けば、呆れた表情の優等生君、ジュードが小さなお盆を抱えてドアの前に立っていた。


「ノックくらいしてよ!!恥ずかしいじゃん!!」

「したよ。返事無いから寝てるのかと思った」


あぁ、溢れる単語やら公式やらに絶望してたから気付かなかったんですねわかります。畜生。


「もしかして教えに来てくれたの?」

「そうやって自分より年下に聞くのってどうなの……」

「だってわかんないんだもんっ」

「入試目前なのにそんなので大丈夫なの?!」

「だーかーらー!大丈夫にするためにわかんないとこを聞いてるんでしょ!」


私が受ける大学は、あと一週間もすれば受験生が最も緊張する日を迎えてしまう。

そんな切羽詰まった状況の中で中学生に自分の問題を解かせるなんて暴挙としか言いようがないが、実際彼は天才な上何だかんだ優しいので、馬鹿な私でもわかるような素晴らしい解説を施してくれるから凄いよね。あ、自分が情けなくて泣きそう。


「あーあ……ところで、そのお盆は例のアレですよね」

「!……ああ、そう、夜食。」


いつもの薄いピンクのお盆には、湯気の漂うマグカップとジュードママお手製のおにぎりが三つ程。

私は色々事情があって、小さい頃からマティス家に預けられている。このおにぎりは、夜も勉強漬けの私を何度励ましてくれたことだろうか。

ジュードの、なんだか微妙な表情が少し気になったと同時に、私はもう一ついつもと違う点を見つけた。


「?……なんか甘い匂いがする」

「!!――じゃ、じゃあ、頑張って!」


思ったことを指摘したその瞬間、ジュードの肩が面白いくらいオーバーに跳ねる。持っていたお盆を若干乱暴な音を立てて置くと、早口にそう言いながらあっという間にジュードは部屋を出て行ってしまった。



「……え?え?」


残された私、ぽかーん。
いやだって、えーと、よくわからない。

え……何で顔赤かったの?えっ?


最後に彼が残していったお盆に目を落とす。私のお気に入りのマグカップは、ちゃあんと理由を教えてくれた。


些かおにぎりと合うとは思えない中身とカレンダーを見比べると、私は夕ご飯ぶりに部屋を出た。







******





「……………はぁ」


……結局、緊張丸出しな渡し方をしてしまった……。


毎年この日はキオノの方から貰える日だったけど、今年はしょうがない。予想通り、あれは忘れている顔だった。


ついでに、と作った自分の分のホットチョコレートを口に含む。


まぁもちろん頑張れって意味でもあるけど、い、一応僕達は……年が離れてるけど、付き合ってるし。こんなことするのはやっぱり恥ずかしかった。あぁ、まだ顔が熱い……。


と、開いたリビングの扉を見て、吸い込んだホットチョコレートを吹き出しそうになった。



「っ、げほっ、キオノ……!?」

「ごめん!!」


驚きと気恥ずかしさに余計むせる僕と、ガバッと頭を下げるキオノ。僕らの手には、それぞれ色違いで、中身はおんなじのマグカップ。


「や、き、気にしないでいいからっ」

「本当ごめん……忘れてた……」

「うん、わかってる。ていうかそれどころじゃないでしょ」

「……うん……ありがと。嬉しい。本当にありがとう、ジュード」


それが聞けたなら、その笑顔が見られたなら、どんなに恥ずかしくても意味があったと思える。部屋に帰るかと思いきや、キオノはそのままテーブルを挟んだ僕の向かいにちょこんと座った。


「勉強は?」

「休憩!せめて、一緒に飲みたいなって」


いいでしょ?とい言いたげにマグカップに手を添えるキオノに、僕は苦笑混じりの純粋な嬉しさを返した。






『此処が最後の拠点だ!』








(ホワイトデーの頃になら返せるよね!)(そうだね。あぁ、お返しは「合格」だと嬉しいな)(あぅぅ…………)











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夢時間泥棒様に提出させて戴きました。





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