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レヴィアタン視点


我の名はレヴィアタン。
厄災の魔女こと、黒魔女ナマエの使い魔の一人だ。

我は今、悪魔使いの荒い親子の給仕をしている。
…何故こうなった。



「やっぱりお袋の部屋は安全地帯だな…」

「まぁたエースやセツがやらかしたのかい?」

「まぁな…」

「ふふ、此処でゆっくり休んでいきな。」



ナマエとニューゲートの娘である名前は、どうやら此処に避難してきたらしい。
まぁ大体理由は分かり切っているから、我は敢えて指摘はしない。

パンプキンパイを食べながら「うまー」とか言ってる名前を横目で見て、紅茶の入ったコップを差し出す。

名前は海を操る能力を持っているから、我は気に入っている。
我も大体は似たようなものだからな。

…だが、我をこうして給仕に使うのは止めてもらいたいものだ。



「名前よ、我を給仕に召喚する(呼び出す)のは止めろ。お前に渡した嫉妬の紋章(エンヴィー・クレスト)はこんな事の為に使うものではない。」

「呼び出せるんだから呼び出さないと損だろ。後お前に淹れてもらう紅茶美味いから、是非と思っただけだ。」

「…我は、そんな言葉などで絆されぬからな。」

「絆されてるって言ってるようなものだろ、それ。」

「…違うと言ってるだろう。」

(素直じゃないねぇ、レヴィアタンは。)



決して嬉しいと思ってなどおらん。
そう、決して嬉しくなどない。

人間の言葉などで嬉しくなったりして、絆されてはたまらないからな。



「レヴィアタン、絆されてるついでに書類もやってくれ。」

「だから違うと…と言うか何故我が貴様の仕事を肩代わりしなければならないんだ。」

「俺にこれ(嫉妬の紋章(エンヴィー・クレスト))を渡した時点でお前は俺の使い魔だろ。これをくれたお袋には本当に感謝してもしきれない。」



主に書類の肩代わり的な意味で。

なんて事を言いつつ、紅茶を飲む名前。
我は書類の肩代わりをする為の悪魔ではないのだが…

因みに今我は人型を取っている。
召喚者が望む姿に一応なれるが、ナマエや名前は特に指定をしない。

…変に指定されても困るがな。



「そう言えばお袋、リリムやリリンはどうしたんだ?」

「あぁ、あの子達ならマルコ達の所だと思うよ。今度こそ騙すんだって、張り切ってたからねぇ。」

「お袋になってマルコ達騙すのは無理だって、いい加減学べばいいのにな。」



五個目のパイを頬張りながら、名前が呆れた様にそう言った。
うむ、それだけは我も思うぞ。

リリスの部下であるリリムとリリンは、マルコ達を騙そうと躍起になり過ぎだ。
無理だと何度もやって分かっている筈なのにな。



「まぁ、どうせマルコ辺りがストップを掛けてくれるさ。」

「お袋…放任主義なのはいいが、ある程度制限を掛けてくれると俺も助かる。」

「あらら、じゃあ名前達にも制限掛けた方がいいのかねぇ。」

「いやそう言う訳じゃ…」

「ふふ、冗談だよ。パイのおかわり、いるかい?」

「いる!」



マルコ達の前ではあれだけ強気な名前も、ナマエの前では子供だな。

リラックスしている、と考えてもいいだろう。
…リラックスついでに我に書類を任せるのはどうかと思うがな。

ふいに、扉の外から騒がしい足音が聞こえた。
この気配は…



バンッ!

「「ナマエー!」」

「おや、リリムにリリン。おかえり。」

「マルコ達駄目だったー」

「また見破られた!悔しいー!」



悔しそうな顔をした、リリムとリリンだった。
やはりマルコ達には見破られていたな。

回数を重ねれば、マルコ達だって見破れるようになるに決まっているだろうに。



「前にも俺が無理だって言っただろ、リリムにリリン。」

「だってー今度こそは出来るって思ったんだもんー」

「リリス様が秘訣教えてくれたのに!あ、でも珍しくエースは騙せた!」

「あははっ、エースは騙されたのかい!名前、鍛錬が足りないんじゃないのかい?」

「…そうだな。」



騙されるのなら、まだまだ鍛錬が必要だな。

ナマエの言葉に、そう言葉を返す名前。
しかし、我は見逃さなかったぞ。

そう言った時に、口の端を釣り上げていたのを。
…末恐ろしいな、ナマエの末娘は。



「あ、そうだー私達ねー新しい技考えたんだよー」

「新しい技?一体何なんだい?」

「ふっふっふ!今からそれを見せてあげる!」



そう言って、リリムとリリンはテーブルから離れる。
…嫌な予感がするのは、我だけなのだろうか。

そんな我の心情など露とも知らず、リリムとリリンが名前に向かってこう告げた。



「名前ー見ててねー」

「目を逸らしちゃ駄目なんだからね!」

「あ?なんでおr「「せーのっ!」」

ボボンッ!



名前が聞き返そうとした瞬間、二人を煙が覆い隠す。
変身か…だがあの二人、ナマエにしかならない筈だが。

と言うか、名前に何を見せると言うのだ。
なんて思っていたら。



「セックシーなの?」

「キュートなの!」

「「どっちが好きなのー!」」

「ぶふぅっ!!!」

「あらら、またとんでもない事やらかすねぇ、あんた達は…」



二人が変身したのは、セクシーな姿の名前とキュートな(と言うかロリータっぽい)姿の名前だった。
それを見た瞬間、名前が思いっ切り噴出した。

何をしてくれているんだこの阿呆共は。

まさかマルコ達(特にエース)に見せてないだろうな?
あの者達に見せたら、とんでもない事になるぞ…



「げほっ…!リリムにリリン!お前ら何してんだ!!」

「何って、セックシーな名前に変身しただけだよー」

「どう?可愛いでしょ。」

「俺の姿でその言葉遣い止めろ!!」

「私は可愛いと思うけどねぇ。」

「お、お袋!」



悪びれる事なくそう言うリリムとリリン。
ケラケラと笑いながら言うナマエ。

…気持ちは分かるぞ、名前よ。



「早く元の姿に戻れ!」

「えーこれをエースやセツに一番見せたいのにー」

「エリザ達も前々から言ってたよ、名前に変身してみせてーって!」

「それは俺が許さない!!」



それはそうだろう。

ただでさえそのままの名前でもあれ程のシスコンな奴らに、刺激の強いものを見せてみろ…
主にエースやセツを中心とした地獄絵図が出来上がるに違いないぞ。



「そう言えば、リリスはどうしたんだい?」

「…え、お袋…リリスも呼び出してたのか。(アイツ俺にキスしようとするから、苦手なのに…」

「魔女の妙薬を作るのに、ニューゲートから許可を貰ってね。リリムとリリンが出て行った後ぐらいに呼び出したんだけど…」

「リリス様ならエリザと口論してたよー」

「なんだっけ、「私×ナマエ&名前だって良いじゃない!」って言ってた。」



…我は、突っ込まないぞ。

リリスがナマエと共に名前も気に入っている事は知っている。
だが、まさかそれ程までとは…



「…リリス達は、放置しとく。」

「ふふふ、その方がいいと思うよ。」

「私達、マルコ達についさっきのやりたーい。」

「と言うかやってくるー!」

「駄目だって言ってるだろ!!」



いつの間にか変身を解いていたリリムとリリンの首根っこを掴む名前。
掴まれながらもついさっきのをやってみたいと暴れるリリムとリリン。

それを見て微笑みながら眺めているナマエ。

…不死鳥マルコよ、早く此処に来てはくれまいか。
本来のツッコミはお前の筈だろう…

僅かに痛み始めた頭を押さえ、我は大きく溜息を吐いた。





(お袋…リリンにしてやられたんだけど…名前に変身するとか聞いてねぇんだけど…)

(それは災難だったねぇ、エース…まぁ、まだ災難は続くけど。)

(え、それってどういう…)

(エース、俺とレヴィアタンで鍛錬してやる。覚悟しろ。)

(鬱憤晴らしには丁度良い相手だな…覚悟するがいい。)

(えぇえええ!なんでそんなキレてんだよ名前にレヴィアタン!)

(ふふふ、頑張っておいでエース。)

(笑ってないで止めてくれよお袋ー!)


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