リクエスト作品 | ナノ






「父の日ィ?」

それを聞いたのは本当に偶然だった。

サッチの作ってくれたアップルパイを食べ、セツに頼まれた組み手を終わらせ、エースに未提出だった書類の催促をして、オヤジに今月の報告を済ませたところで部屋に帰ろうと廊下を歩いていた時、丁度横切った部屋から声が聞こえてきた。(この部屋……マルコの部屋か。)

「そうだ!明日は父の日なんだぜ!!」
「オヤジに何かサプライズをしようじゃねぇか!!」
「サプライズねぇ…」
「あ!僕肩叩きする!!」
「ハルタ……小学生かよお前」
「なら俺はオヤジのために酒を買ってくるかねい」
「んじゃ、俺はオヤジに健康的で尚且つ美味い料理を作るぜ!!」
「俺は………腹踊りでもするか?」
「それは止めとけエース」
「そうそう、腹踊りはラクヨウの役目だ」
「はあ!?…いや、踊るけどよ」
「「「(踊んのかよ)」」」

ぎゃいぎゃい騒がしく話している声が未だに聞こえるが、俺は俺で頭の中を支配している言葉に集中していてそれどころではなかった。

ちちのひ……?
チチノヒ……?
乳の日………?

「(父の日!?)」

父の日
(意味:父に感謝する日。六月の第三日曜を当てる。  広辞苑参照)

「分かった!俺、火の輪くぐりやる!!」
「な、プレゼントはどうする?」
「酒……、はマルコが買ってくるからなぁ…」
「俺は無視!?」

扉の向こうから聞こえる騒がしい声にハッと意識が戻ってくる。どうする?俺は何をすればいい?オヤジを喜ばせてやれるようなサプライズ?駄目だ、思い浮かばない。酒をプレゼント?いや、マルコがやるから駄目だ。どうする?どうする?

頭の中を支配する『父の日』という単語に、悶々と悩みながらマルコの部屋を通り過ぎた。(勿論、完全に気配を殺しながら。)




≡≡≡≡≡≡



――――父の日当日、

甲板では隊長達を筆頭に大盛り上がりだった。マルコは白ひげの好きな酒を買ってきて、サッチは甲板に出したテーブルを全て埋める程の料理を出した。その他にも、エースは火の輪くぐり、ジョズの肩に乗ったハルタは白ひげのの肩叩き、イゾウはワノ国に伝わるという舞など。(ラクヨウは甲板の端の方で酔っ払いながら腹踊りをしていた。)

白ひげもそれを楽しそうにそれを眺めながら酒を煽った。ふと、何かに気付いたように視線を彷徨わせた。

「ナマエはどうした?」
「…あれ?ナマエ、来てないの?」

疑問に応えたのは肩を叩いていたハルタ。白ひげと同じように甲板に視線を巡らせるが、目的の人物は見当たらない。

「……いないねー」
「そういえば、今日はまだナマエを見かけてないな」

ハルタの言葉にジョズも続け、白ひげも不思議そうに首を傾げた。


―ザッパアアアアアアアアアアアン!!


突如、モビーディック号を挟むように二本の水柱が上がった。

「な、何だ!?」
「敵か!?」

いきなりの事で甲板にいたクルー達も敵襲かと焦り出す。しかし、辺りを見渡しても見えるのは青い海だけ。その時、

「お前等ァ!料理を濡らしたくなけりゃさっさと動きな!!」

甲板に響いたのは先程白ひげ達が話していた人物の声。その声に咄嗟に動いたのは特攻隊の隊員。大きなビニールでテーブルの上の料理を覆い隠す。

同時に、モビーの両脇に立っていた二本の水柱と同じような水柱が立ち、モビーの上を交差するように何度も行き交った。その水柱から僅かに水滴が散って甲板やクルーを濡らす。水滴がキラキラと光に反射する様はまるで流れ星のようだ。幻想的な光景にクルー達は息を呑んだ。

「グラララ…ナマエも中々粋なことをするじゃねェか」

白ひげが持っているジョッキの中に海水が落ちた。それをぐびりを煽り、空を見上げる。

「――…あ!」

白ひげの肩越しに見ていたハルタが興奮気味に声を上げた。その声に続いて、いつの間にか静まり返っていたクルー達の歓声が甲板に響く。

「オヤジ」

ゆっくりと白ひげの前に現れたナマエ。甲板の歓声はまだ止まない。

「いつもありがとうな!」

ニッ!ナマエは笑って両手を上に広げる。
その上には、

「これが、俺からのプレゼントだ!!」

七色の架け橋が、モビーの上で輝いていた。





!!


(グラララ!さすが俺の娘だ!!)
(ふふっ!)






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