壱拾萬打企画! | ナノ






これはまだ、キイチが白ひげ海賊団に入って間もない頃のお話。


『まだ来ないな』
『まだ来ないみたいだね』
『早く来ないかな』
『早く来てくれないかな』

『……現れるものか』



よろしく、相棒



俺はただ一言、疑問に思ったことを口に出しただけだった。


「キイチってさー、武器とか持ってねェの?」


最近やっと素直になった末っ子は、粗末な銃は持っていたものの(しかもそれはどっかの海賊から奪ったものらしい。)その他の武器を携帯していなかった。敵襲があったらいつも能力を使ったり、素手だけで倒したりしていた。いくら自然系の能力者とはいえ、流石に能力ばかり使っているのはどうかと思ってそう言った。しかし、


「……まぁ、色々あったから」


キイチがぽつりと言ったその一言が、随分と重たかった。一気に食堂が鎮まりかえり、「お前よくも末っ子の傷を抉ったな…」と言わんばかりの恨めしい視線が俺を射抜く。え、これ俺のせい?マジで?


「…だけど、能力に頼りっぱなしというのはいけないとは思っていた」
「お、おう…」
「次の島で刀を調達しようかな」


ほら、お前ら何固まってんだ?と周りを見渡すキイチ。違うぞキイチ、そいつらは固まってんじゃなくて俺を睨んでんだよ。こいつ、変な所で鈍感だから色々と心配になってくるぜ…。いつか俺達が苦労するのが目に見えて泣けてきた。



≡≡≡≡≡≡



「刀を探している」


あのサッチの一言から一週間後、やっと島に着いた。そして俺はオヤジ(…って呼ぶのはまだ恥ずかしいが。)から渡された金が詰め込まれた袋を持って武器屋へと足を運んでいた。そして冒頭の言葉。できれば中古がいい、と続ければ一応何本かは差し出される。が、


「(…刃毀れが酷いな。特にこっちのは…二、三回剣を受けただけでも折れそうだ)」


俺は中古の刀を探していた。オヤジからもらった金があるとはいえ、あまり無駄遣いしたくないという気持ちがあったからだ。

刀を雑に扱う奴は多い。特に妖刀に至ってはかなりいるだろう。気味が悪いがその場しのぎに、普通の刀のように扱えない、手入れなどせずとも勝手になんとかするんじゃないか。そういった買い手の自分勝手な考えが妖刀を駄目にしてしまう。(勿論きちんと丁寧に扱う奴もいるぞ?でもこういった武器屋で売られてしまった刀に関しては大体そんなもんだ。)


「(まぁ、いい刀も妖刀も相性の良い主と一生を過ごすんだろうな)」


それこそ、主(持ち手)が死ぬか、従者(刀)が死ぬか。それが主にとっても刀にとっても良い事なんだろう。下手に相性の悪い者同士が一緒にいても、途中で何かしら面倒事が起きてしまうからな。しかし、だがしかし。


「俺に合う刀が見つからない…!」


さっきので3軒目だ。普通の刀はともかく、妖刀というものは触れれば自分に相性が良いのか悪いのか何となく感じることが出来る。これまでにいくつかは保存状態のいいものもあったが、触った途端に体が鉛のように重く感じたり、静電気のようなものが弾けたり、誰も持っていないのにいきなり斬りかかってきたりと散々な結果だった。

唯一相性の良さそうな妖刀も、刃毀れや錆が酷いものだったために買うのには少し躊躇われる。刃毀れは手入れをすれば何とかなるものなのか?…いや、無理だろ。でも他の妖刀には悉くフラれたからなぁ…。(ちなみに、普通の刀のほとんどは刃毀れが酷過ぎて買う気にもなれなかった。)


「……どうしたらいいものか…」


とりあえず、もう一度他の武器屋を探してみるか。さっきまでは表通りにあるものばかりだったから、次は裏通りも調べてみよう。……曰く付きの妖刀、なんてのも多そうだが妖刀なんて曰くが付いてなんぼだ。ま、普通の刀であろうが妖刀であろうが、自分と相性が良いものを探したいというのが本音だがな。

そうして、裏通りにあったとある一軒の武器屋で運命的な出会いをするとは、この時の俺には思いつきもしなかった。








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