壱拾萬打企画! | ナノ






「烏屋ー!面白いものを見付けたぞー!」
「だから!何でお前は何回もここ(白ひげ海賊団)に来るんだよ!(※フリリク『立ち入り禁止』『マイハニー!』参照)」
「それはー!お前がの事がー!とゅきだからー!」
「普通に発音しろ!」
「好きだか―――…あっ!」
「あっ」


朝一番、ぼふんっ!と大量の煙と大音量の爆発音がモビーディック号の甲板を包んだ。それを敵襲かと間違えたエースが、自室で軽いボヤ騒ぎをしていたというのはまた別の話。



とある一部の未来の貴女(貴方)



先程の騒ぎが収まった頃。甲板には全隊長が勢ぞろいし、その目の前にはトラファルガー・ローが正座させられていた。


「…で?トラファルガーは何でここにいる?」
「烏屋に買ってきたものを見せようと思って」
「買ってきたものは?」
「そこのバズーカ」
「弾は?」
「俺が転んだ拍子に発射して烏屋に当たっちゃった★」
「「「死ね!」」」
「待て、俺を殴ってもいいのは烏屋だけだ!!」
「知るかよ!!」


アーッ!という叫びと打撃音が甲板に響き渡る。完全なるフルボッコである。しかし、ここには理不尽だと言って助け出してくれる者はいない。(恐らく元からそんな奴はいない。)そもそも、何故船長単独で敵船までノコノコとやってきているんだか。どこかでペンギンが溜め息を吐いたような気がした。


「そんで、」
「…何だよ」


数分後。フルボッコが終了し、整った顔が見るも無残に腫れ上がっているローに話しかけるサッチ。野郎共に殴られたせいなのか、ローはかつてない不機嫌顔で返事をした。だがそれに怯むサッチではない。何故なら、


「あっちにいるのはどちらさんで…?」


サッチはローとは別の方向を指して完全に動揺していたからである。指先は勿論、腕までも震え、目もクロールどころかバタフライをし出す勢いでざっぱざぱ泳いでいる。しかし、動揺しているのはサッチだけではなく、甲板に集まっている全員も同じである。


「……ん?話は終わったか?」


自分に視線が集まったのに気付いたのか、視線の先にいた人物が顔を上げた。

黒髪のくせ毛にルビーのような赤い目。右目の眼帯や、薄紫色のファーが付いた黒いコートを着ているその人はある人物を彷彿とさせる。それなのに、どこか自分達と同じ…もしくはそれ以上の年を経たような貫録。


「キイチ…?」


思わずといったように零れた声はエースのもの。その声にふと顔を緩めるその人物。


「何だ、エース。自分の姉の顔を忘れたか?」
「え、え…ええええええええ!!」
「「「「キイチ!?」」」」


エースの絶叫に一拍置いて、周りの隊長達も声を揃えて驚く。からからと笑う人物……キイチは、全員の顔を見回して一度息を吐いた。


「まぁ…この様子からして、現状の原因はそこの外科医にあるんだろうが」
「ファミリーネームすら呼んでくれなくなってる!」
「黙れ面倒事の根源」
「いつもより痛い!」


キイチの拳がローの顎へクリティカルヒット!(咄嗟に舌を噛まなかったローはある意味凄い。)痛みに悶えるローを放置し、キイチは口早に甲板にいる全員へ話し始めた。


「実はな…そこに転がってるバズーカは、弾が当たった人物と十年後のその人物を入れ替えるものなんだ」
「……は?」
「えっと…?」
「つまり……」
「…つまり、今ここにいる俺は十年後の俺の姿ってこと」
「「「「「ええええええ!」」」」」


キイチの説明に、またしても驚く隊長達。その中で驚いていた様子ではあったが、すっと手を挙げたイゾウとマルコが疑問を口にする。


「入れ替わってるって言ったよな?つまり、十年前…ここにいるはずだったキイチは、」
「あぁ、"俺"がいるはずだった十年後にいる」
「…危険な場所じゃねェだろうな?」
「大丈夫だ、俺もモビーにいたからな。多少もみくちゃにされてる可能性はあるだろうが、危険はないだろ」
「そうか…」
「こっちのキイチはいつ戻るんだい?まさか、永遠にってわけじゃあ…」
「それも大丈夫だ。確か、五分だったか十分だったかで戻るようになってる」
「…そうかい」


ほっと息を吐く二人。それを見たキイチが苦く笑う。


「過保護は相変わらずだなぁ」


こっちの俺だって二十三だろ?と首を傾げるキイチ。しかし、そんなキイチを隊長達は真剣な顔で否定した。


「キイチはなぁ!見てるこっちが不安になるほど流される時があるんだよ!」
「そうだぞ!この前なんかアップルパイがあるからって変な奴にふらふらついていったし!」
「ああ!その前だってエースに押しに押されて一緒に寝てたし!!」
「……何か駄目だったか?」
「「「全部駄目だろ!!」」」


駄目だ全然成長してない!そう絶叫するサッチを置いて、キイチは今挙げられた出来事の何がいけなかったのかを悩み始める。顎に左手を添えて首を傾げたキイチに、ハルタがあっと声をあげた。


「キイチ、その指輪って……!」
「ん?あぁ、これは…――――」








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