零僕






「ねぇ」


「んー」


「ねぇってば」


「んー…なんだよ」


「早くしろよ」


「我がまま言うなよ」




え?いやいや、なんかこの会話でぼくが零崎に我がまま言ってるみたいじゃないか。
正しく描写するとまったく逆なんだよ。逆逆。

零崎に連行されて甘味所にいるわけなんだけど、零崎がメニュー表見て全然注文しない。ていうか、迷いすぎて決まってない。
店員さんなんか苦笑い通り越して無表情だよ。サービス精神が消える瞬間をはじめて見たよ。




「はぁ…」




ため息をつく、このくらいしかたないよね?
あぁ。ついでにどっか行っちゃった店員さんの分までため息をついてみる。

はぁ、

メニュー表を食い入るように見る零崎を見てまたため息をつきたくなった




「零崎って結構優柔不断なんだな。しってるか零崎、優柔不断な男は…」


「女にモテない、だろ?そんぐらい知ってるっつーの」


「だけじゃなく将来ハゲるそうだ」


「マジで!?」


「うん。まじまじ。本気と書いてマジと読む的なアレ」


「うわぁーマジかよ。じゃぁこのページのもの全部で」


「うわぁーマジかよ。」




何品食うつもりだよこのチビ。
ていうかコイツの胃袋キャラが定着しすぎて動じない僕も僕だよな…

いつの間にかいた店員さんに呪文のように立て続けにスイーツ系を言っていく零崎と軽く相槌をして書き込んでいく店員さんをみる。
うん。どうでもいい。だからいつの間にいたんだろう、手抜きなんだろうか?という突っ込みは心の中だけにしていただきたい。




「いーたんは何にすんの?」


「…紅茶で」


「かしこまりました」


「これでいいんだろ?さっさと決めてやったぜ」


「あぁ、ハゲる云々の話?」


「本気と書いてマジと読む」


「かもしれないかもしれない。ていうかそうだといいね。って話だっけ?」


「流された上に疑問形で返された!!」


「ハゲるといいな」


「誰がだよ!!」


「え、ぼくの口から言わせる気なの?」


「何を言うつもりだこの野郎!」


「…お待たせいたしました」




お、零崎とどうでもいい会話していたら店員さんが甘味持って来てくれた。
早いもんだ。と、内心感心しながら少し醒めた紅茶を啜った




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