零僕 |
「あー」
「あー」
間抜けな声を上げながらぼくと零崎はそれを仰いだ
どんなに間抜けな声をあげようともどんなアクションをしようとも雨は止まないのだけども。
「雨だなー」
「どっからどう見ても雨だなー」
「残念だなー」
「本当になー」
今日は7月7日。世間でいう七夕なんだけど、実の事いうとどうでもいいんだよね。
わぁ!七夕だ!織姫様と彦星様はちゃんと会えたのかな!!?みたいなこと考える脳みそは残念ながら持ち合わせていない
だけど、今日だけはそんなロマンチズム関係なく晴れてほしかった
「なぁ、いーたん」
「なんだよ、零崎」
「もうこの際雨でもいいから行かね?」
「濡れるぞ」
「わーってるって」
空を見上げたままのぼくらの会話の欧州。
雨はまだまだ降り続けている。
たしかに、このまま動かずにいても雨は止まないだろう。ここは零崎の案に乗っかるのが一番楽そうだ
ぼくは壁にもたれるのを止め、鞄から折りたたみ傘を取り出した。なんせ折りたたみ式なので一人分といってもやや小さい。
まぁ、ないよりはマシなのかもしれないけどさ
「そうだね、行こうか。あの二人も死ぬ気になればカササギを晴れの日の倍集めて川わたるだろうし」
「どちらにせよ、踏まれる運命なんだな」
「踏まれたくてやってるんじゃない?なんせ毎年踏まれに天の川までいくんだから」
「ロマンもロン毛もクソねえな!!」
「きっとドMなんだよ」
「子供の夢を壊すようなことはもう聞きたくないっ!」
「で?零崎、お前さっきから何も出してないけど傘は?もしくはレインコートは?」
「かはは」
零崎は笑った。乾いた笑み。
そうか、その笑い声の「かはは」の中に隠されてる意味を察してくれと。
傘もレインコートもない自分に何かしら慈悲をかけろと。そういうわけか。ふうん・・・
「チャレンジャーだな。雨と雨の合間を縫って走っていくなんて、とてもとてもぼくには真似できないよ。」
「ちょっと待たんかい」
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