魔族の謁見



※吹雪(アツヤ)吸血鬼パロ

その夜も…

彼はそれを求めた。

深夜。

扉を叩かれて開けてみれば、普段…昼間の彼とは違う瞳の彼が。

「…吹雪?」

「半分正解。」

瞳の色が蒼ではなく橙。

つまり…

「アツヤ、か?」

にやり、彼はその擬音がよく似合う笑顔と人にはない牙を見せて言った。

「正解…よぉ、豪炎寺。」



彼を部屋に招き入れると、力強く腕を引かれ、その腕の中に閉じ込められた。

「俺がきた理由…分かるよな?」

「…あぁ、大体な。」

アツヤが吸血鬼として、吹雪の中に生存し続けていることは、俺と彼らだけの秘
密である。

そんなアツヤがここに来た理由なんか、一つしかない。

「血が欲しいのか?」

直球に問えば、彼は楽しそうに頷いた。

「わかってんじゃねーか。
…お前の血が、病みつきになる位欲しいんだ。」

後ろから息が多い低音で囁かれ、背筋がゾクリと震える。

首筋に舌が這う感触には未だ慣れずに

「…んっ!」

小さく声を上げてしまう。

それが面白かったのか、彼は執拗に舌を這わせ続けた。

「…ふ、ぅ…ぁあっ!」

「お楽しみのとこ悪いが…行くぞ。」

つぷり。

痛い。

二本の牙が首筋に食い込む。

しかし、その感覚は嫌いではない。

彼と…アツヤと繋がっている証なのだから。

…それは数秒のことなのだが、とても永い時間にも感じられてしまう。

嗚呼…頭がクラクラしてきた。多少血が足りなくなってきたのだろう。

そう思った瞬間ずるり、と牙が抜けた。

「はぁ…はぁっ…」

「んーっ。やっぱお前の血が一番だな…
でも、ここで今日は終いだ。辛いんだろ?」

ぎゅっと抱き締められて唇を奪われる。

銀髪が背中に埋まる。

「明日の練習も、でれるよな?…士郎が、無理させるなってさ」

軽く泣きそうな、自己嫌悪に陥った彼の声が悲しげに鼓膜を震わせる。

その腕に自分の手をそっと重ねて、

「大丈夫だ。この位なら…」

急に視界が歪んだ。

世界がブラックアウトしていく。

「お、おい豪炎寺っ!?」

彼の胸の中に沈んだ。

(「アツヤ!!豪炎寺くんにあんまり無理させないでって言ったよね?」「わ、悪か
ったって士郎…」)

魔族の謁見





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