こんなにも近くて遠い
「風丸…っ!!」
そう、俺の名前を呼びながら泣きつく彼の心には、別の男だけが映っている。
豪炎寺。
目の前の大事な幼馴染…円堂をこんなにも泣かせている。
「あの馬鹿…」
泣き止まない彼の髪をくしゃりと撫でると、潤んだ瞳が不思議そうに見上げてきた。
「風、丸…?」
「大丈夫だ、円堂。いつも、帰ってきただろう?」
心にも無く、彼を弁護してみたりする。
そんな言葉でも、見上げる瞳は喜色にかわる。
「!あぁ、そうだよな、豪炎寺は、必ず帰ってきた…」
ぎゅっと俺の洋服を掴みながら、彼はそう呟いた。
強い衝動。
このまま、彼を奪ってしまえないのか。
俺のものにできないのか。
でも、こんな真っ黒な感情は彼には向けられない。
掴まれたままの腕を辿っていくと微かな寝息。
泣き疲れたのか。
茶色の髪を撫でていると、無意識だろう、擦り寄ってきた。
「ごう、えん…じ」
俺の名前ではないけれど。
なぁ、円堂。
「俺がお前を、愛してるって言ったらどうする?」
こんなにも近くて遠い
(彼の笑顔が見たいから、)
2期なら「狂おしい」の前、3期なら「真夜中」の前
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