甘く弾ける、dropping…
受験勉強。
エイリア学園からこの地球を救って帰ってきた俺にのしかかった、それ以上の難題だった。
「…綱海。」
これは酷いよね。
後輩である音村にも、こう言われた真っ白のプリント。
一際目立つのは、一番下に書かれた赤い数字。
16。
紛れも無く、この間のテストの点数だ。
使命欄にもきちんと「綱海 条介」と俺の名前が書いてある。
「君は…3年、だよね。」
「ん?あぁ!!」
即答した瞬間、溜息が返ってきた。
「受験生なんだよ?」
俺のテキストを(いったい何処から持ってきた?)積み上げて彼は俺を睨みつけた。
「…勉強しなきゃ、ね?」
「あぁーっ!!何がにじほうていしき、だ!!にじかんすう、だ!!」
「煩い、黙ってやれ。」
既に分かっていなかった勉強の数々。
そんなもん、今更理解できない。
「ほら…ここはxを代入して…」
音村が近寄ってくる瞬間、甘いにおいが香る。
「…なにか食ってんのかぁ?」
「飴。綱海のできなさにイライラしてきたからね。」
正直すぎるだろ…
でも、俺ができないのも事実で。
それと同時に音村が教え上手なのも事実で。
リズムを刻む口調は変わらずだが、俺が止まると助けてくれる。
そして、小一時間後…
「終わったぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!」
課題とテスト直しが終了した。
「ありがとな、音村!!」
「別に。」
あ、少し照れた。
「綱海。」
呼ばれた声は意外と近くで。
ちゅ。
「ぇ?」
「今回のお代だよ。」
いつもより早いリズムが、鼓動をそっと、
甘く弾ける、dropping…
(重なった唇は、甘い甘い苺味)
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