悪人面のバクラ君の足元で縛られ、身動きの取れない私。
バクラ君と対峙する遊戯君はいつも可愛いのに今はとても頼もしいく見える。こんな状況なのにナチュラルにときめいてしまう程だ。
二人が行っているのは闇のゲーム。衝撃や受けるダメージは本物で、デュエルが始まり、ぴりぴりとした緊張感に包まれときめいている場合じゃない事を再認識する。
「――更に『マシュマロン』でダイレクトアタック!」
バクラ LP2600 → LP2300
先制ダメージを与えたのは遊戯君だった。
このデュエルで遊戯君の扱うマシュマロンやサイレント・ソードマンのカードは今まで見た事が無い。
あのデッキは明らか、もう一人の遊戯君と共に今まで闘ってきたデッキではない。恐らく、彼一人で組み上げものだろう。
バクラ君のコンボをするりとかわし一気にライフに差をつけた。
けれど、油断は出来ない。大幅にライフを削られたと言うのにバクラ君は…不敵に笑っているのだから。
「ククク…成る程なぁ。器の方もそれなりのスキルを持ち合わせていた様だぜ…」
「!」
「闘い甲斐があるって事にデュエリストは少なからず、昂揚感を持つもの…だが…生憎、俺は…ただの殺戮者でね…!」
「貴様をブッ殺した後に昂揚感に浸らせてもらうぜ。俺様のターン!手札より、マジックカード発動!『呪いの双子人形』!」
赤い箱と黒い箱を持った女の子の人形が現れた。
あまりに不気味なその様子に青い顔した城之内君と同時に悲鳴を上げてしまった。
「ぴゃあああ!怖いむり「うるせぇッ」
突然、湯沸かし器みたいな声出すんじゃねぇ!全く…お前よ。少しは雰囲気読んで大人しくしてろってんだ。
「いでっ」
バクラ君は縛られ、抵抗出来ない私の頭を容赦なく叩く。
早速、雰囲気ぶち壊したと思ってるよ!でも私一応女子!見えないけど、女子なの!
「だ、だってさ、バクラ君のデッキ怖いんだもん!」
恐ろしいアンデットパレードを超アリーナ席で見せられているんだ。
同じアンデット族デッキでも聖さんのデッキとはまたちょっと違った怖さがある。
手を縛られて、目隠しも出来ないんだ。悲鳴くらい好きに上げさせてくれたっていいじゃないか。
「だもんって…男みたいななりして気持ち悪い事言ってんじゃねぇよ」
「今度は言葉の暴力!」ひど、酷いよ。私泣くよって、もうちょっと涙ぐんでますけどね!
「バ、バクラの奴…遊戯の目の前で紫乃を泣かせてやがるッ!海馬の二の舞になるぞ…!」
「どうなっても、知らねぇぞ…俺は」
「不謹慎だけど、紫乃が変わりない様でちょっとホッとしてるわ」
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