「そうよ…皆、王国での事を思い出して!」
突然、杏子ちゃんが閃いた様に叫ぶ。
王国で良い思い出があんまり無い私は「え」と、瞬時に身体が固まる。
「王国で紫乃を媒体にして、私達の心を遊戯に送ったでしょう?それの応用よ!」
確か、王国で聖さんが提案したんだっけ。今、それをもう一度しようと言うのだ。
「おぉ、そうだ!それしかねぇ!」
今までゼイゼイと苦しそうにしていた城之内君が急に元気になって、がっしと私の両肩を掴む。
「えぇい…皆私の周りに集まって!」
もう一人の遊戯君の為ならなってやろうじゃないか、媒体に!!
今程自分のヘンテコ体質に感謝した事は無い。
「皆、手を合わせて!頭の中であの古代文字を思い浮かべるのよ!!」
皆で私を囲んで輪になる様に手を合わせ、王墓にあった古代文字を思い浮かべている。
そうしているとすぐに、私の頭の中に見た事もないものが思い浮かんでくる。
王墓の奥底にひっそりと、そして厳かにある石版に刻まれたそれ。
それをもう一人の遊戯君の首に下がるカルトゥーシュに刻む。
どうすればそんな事出来るのかと、普段なら悩むところだが、今の私はすぐに強く念じた。
素直にそうする事だと強く信じられた。
『貴様等の願いも命乞いも、我が闇の力によって打ち砕おてやるわ!ゾーク・インフェルノ!!』
その場を動かない私達を無駄だと嘲笑うゾークの攻撃が間近に迫る。
『仲間諸共消え去れ、ファラオ…!』
「!」
突如、カルトゥーシュが眩しい光を放ち始めた。
もう一人の遊戯君がカルトゥーシュを握り締め力強く立ち上がり、私達の前に立つ。
「ゾーク!今、王の名の封印は解かれた!!」
そう叫び告げるもう一人の遊戯君。
闘い疲れボロボロになっているその姿でも、今の彼は王の威厳に満ち溢れている。
「我が名は――アテム!!」『な…っ!』
迫っていたゾークの攻撃が目の前で光に吸い込まれてゆく。
アテム…何だか凄く、懐かしい響きだ。これが本当の彼の名前。
「! 遊戯君のデッキから」
「…神のカードが!」
隣の遊戯君のデッキから3枚の神のカードが飛び出し、太陽を覆う分厚い雲を突き抜けていく。
光が暗い大地に光が降り注ぐ。
「ゾーク!!友の結束が今、神を呼ぶ!!」
『神だと…馬鹿な……』
徐々に暗闇が晴れていき、ゾークの声が震え出す。
「見よ!三幻神の姿を!!」
太陽の神、天空の神、大地の神がゾークの目の前に召喚される。
「そして、王の名のもとに――神を束ねる!!」そう彼は握り締めたカルトゥーシュを天に掲げると、
神々は一つに重なり、新たな神を出現させる。
巨大なゾークをも見下ろす更に大きな神。光の創造神 ホルアクティ。
神々しく、優しい暖かな光が大地に降り注ぐ。
『ホ…光の創造神…』
その眩い光にゾークが怯え後退りする。
「闇よ、消え失せろ!!」
ホルアクティの両手から、眩しい光が放たれた。
『ジョセル!!』
『グオオオオオオオオオオオオッ!!』
光に包まれたゾークは内側から崩れ、断末魔の悲鳴を上げた。
END
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