Black valkria




「あー時間長いなぁ」


すっげー手持ち無沙汰、暇。
本日のトーナメントは全て終わり、今は消灯時間真っ只中。薄暗い部屋で気だるく、時間が過ぎるのをただ待つ。
一回戦でデュエルをしてしまった俺には酷く長く退屈な時間であった。他人のデュエルなんて、見る気も起こらない。
バトルシップの中を見学する気も無いし、第一ぶらついている所を遊戯達に見つかって群がられても、困る。奴等と馴れ合う気は無い。


「――聞こえる……これは闇の、音」


不意に聞こえたのは普通なら、聞こえるはずもないもの。
丁度いい。暇を潰せそうだと、逸る気持ちを抑え、音が強くする場所へと向かう。
感じる、闇の力を。誰だか知らねぇけど、面白そうな事してるじぇねぇかよ。










辿り着いたのは天空デュエル場。そこで、対峙し合うのはナムとか言う奴と紫乃の友人の漠良。
そして更に面白い事に二人共闇に支配されていた。ははは、本当にツイてる。
これは常人にはただのデュエルにしか見えないが、これは…そう究極のゲーム。


負けた者は闇に葬らる――死のゲーム。


「随分、楽しそうな事してるじゃないか」


漠良の身体がもう消えて無くなりそうな状況だった。
どうやらこの闇のゲームの敗者は漠良の様だ。いや、闇人格の方か。


「お前は確か…紫乃とか言ったなぁ」


「よお、初めまして。お前…マリクだろう」


マリクの表人格が二度、紫乃にグールズのレア・ハンターを仕掛けてきたっけな。
大した事のねぇ雑魚だったけどさ、あんたは別格だろうよ。


「ふん。…はじめましてか、すぐにさようならかもしれねぇがな…ククク」





「鏡野てめぇ…!今まで、どこほっつき歩いていやがった」


「どこにいようが敗者のあんたには関係ないね。さっさと、消えてな」


漠良の闇人格の記憶は無い。バトル・シティ以前に何かのきっかけで、紫乃と接触しているはずだが、
残念だけど、今はこのゲームの勝者であるマリクに興味があるんでね。あんたの相手をしてられねぇんだわ。


「…く、覚えておけ…俺は必ず甦り、貴様を殺す……」


ケタケタと笑い千年リングと言う(誰が言ったか分からないが)オカルトグッズのみを残し、奴の体は完全に消え去った。





「なら、闇を飼いならすのも面白いかもな」


残された千年リングを拾い上げ、マリクは漸く俺に向き直る。


「次はお前さんかい、闇に消されるのは」


マリクが挑発的に笑う。それは願っても無いお誘いだ。それだってのに、





「そのお相手、私に譲って頂けないかしらぁん」


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