Black valkria




「おっし!アンデット野郎のモンスターを一気に破壊したぜ!ライフも並んだ!」


「でも、『ヴァンパイア・ロード』は夜世君の大切なエースだったはず。そのカードが倒されたのにあんなに冷静でいられるかな」


「何か、裏があるって言うの?」


「うん…そうかもしれない」


気をつけて、紫乃ちゃん。君も本当は気付いているはずだ。夜世君の雰囲気が前とは違うって。





「僕のターン、ドロー。マジックカード『強欲な壺』を発動!デッキから、カードを2枚ドロー…」


引いたカードを見て、妖しい笑みを一つ浮かべて、聖さんは続けた。


「そしてリバースカードオープン。永続トラップ『ヴァンパイア・リボーン』。墓地から、ヴァンパイアと名の付くアンデットを復活させます。復活せよ、ヴァロン!」


モンスターゾーンに黒い棺が現れ、中からヴァンパイア・ロードが華麗に復活を果たした。
隣のヴァンパイア・レディの手を取り、マジックショーの様に優雅にお辞儀をする。だが、彼等のその表情がとても、曇っている様に見えたのだ。


ヴァンパイア・ロード
[ATK/2000 DEF/1500]





「場の二体のアンデットを生け贄に捧げ――!」


「『ヴァンパイア・ロード』を生け贄に…!?」





「現れよ!狡猾にして、偉大なる力!『ダーク・ナイト-パイモン-』を召喚!!」


ダーク・ナイト-パイモン-
[ATK/? DEF/?]


それは黒い紫色の掛かった霧の様な、はっきりとした形を持たない。
ぐにゃぐにゃと、形を絶えず変えている。そして感じた。あのカードから、恐ろしい負の力を。
ヴァンパイア・ロードを生け贄にした事だって、驚きだと言うのに。ダーク・ナイトまで出されて、絶句した。





「どう、して…そのカードを」


私の渇いて掠れた声が零れた。
そのカードは商品化されてない上にペガサスが完成次第、私に届けてくれると言ったカードだ。
ジクジクと左胸が痛む。突風で舞う聖さんの前髪の隙間から、覗いた瞳は…深い紫色をしていた。


ダーク・ナイトを届けてくれたクロケッツさんが言っていた。ペガサスが何者かに襲われて、千年眼を奪われたと。
聖さんがその事件に関係しているのかもしれないと、何故か、思ってしまった。
ペガサスを襲ったのは指輪を持つ女だと、言われていたのに。何故だか、そう感じてならない。


今だって、聖さんの様子はおかしい。
瞳を狂気に輝かせて、大切なアンデット達には目もくれない豹変ぶり。





「く、くははは!『ダーク・ナイト-パイモン-』のモンスター効果、発動!このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、このカードの攻守は…相手の場に存在するモンスター1体と同じになる!」


「私の場にはカオス・ソルジャーの1体のみ…!?」


ダーク・ナイト-パイモン-
[ATK/? → ATK/3000 DEF/? → DEF/2500]


「まだです。僕は最後の手札を墓地へ送り、パイモンの第二の能力を発動!それはそのモンスターの効果でさえ、パイモンは身に付ける事が出来るのです」


「なっ!」


形を持たない霧が蠢き、形を成していく。そうカオス・ソルジャーへと姿を変えていく。
強力な攻撃力だけではなく、モンスター効果までも、コピーされているのは厄介だ。





「早速、『カオス・ソルジャー-開闢の使者-』のもう一つの効果を使わせてもらいましょうか。このターン、このカードがバトルしない代わりに場のモンスター1体をゲームから、取り除きます!」


「『カオス・ソルジャー-開闢の使者-』をゲームから除外します」


「く…ッ」


「ターンエンド」





「違う…お前は聖さんじゃない」


「おやおや、何故そう思うのですか」


「聖さんがそんなカードを持っているはずがない。そんなカードを使うはずもない!」


お前は誰だ。聖さんの中で、聖さんを支配するお前は誰だ。千年ロッドの力で、洗脳術が使えるマリクか。
いや、でも、マリクに操られても瞳の色まで変わったりしない。あの色はまるで、そうあの人の様な…――。


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