Black valkria




「更に私はマジックカード『フォース』を発動!」


「!」


「このターン終了時まで、『天界の王 シナト』の攻撃力を半分にし、その半分の数値を『真紅眼の黒竜』の攻撃力に加える!」


天界王 シナト
[ATK/3300 → ATK/1650]
真紅眼の黒竜
[ATK/2400 → ATK/4050]


天界王 シナトの体は半分に縮み、そして真紅眼の黒竜の体は倍の大きさに膨れ上がる。
それでも、陸のポーカーフェイスは崩れない。そもそも、これを危機だと、感じていないのかもしれない。


「だけど、例え、シナトを破壊しても、僕にはフィールド魔法『天空の聖域』がある。シナトは天使族。よって、『真紅眼の黒竜』に攻撃されても、僕が負うはずの2400のダメージは全て0になるんだよ」


「まだまだ!『疾風の暗黒騎士ガイア』を通常召喚!」


嘶く漆黒の馬に跨り、二本の真っ赤な槍を構える騎士の登場に陸はピクリと眉を動かした。
何故、レベル7の疾風の暗黒騎士ガイアが召喚出来るのか、分かっていないんだ。


疾風の暗黒騎士ガイア
[ATK/2300 DEF/2100]


「手札がこのカード1枚のみの場合にガイアは生け贄無しで召喚出来るんだ。まだまだ勉強不足だな!」





「バトル!『真紅眼の黒竜』で『天界王 シナト』へ攻撃!黒炎弾!」


「『疾風の暗黒騎士ガイア』の攻撃力2300のダメージくらい、どうって事ない」


天空の聖域は天使モンスターいてこそ、戦闘で発生するダメージが0になる。
シナトが破壊されれば、次はガイアの攻撃が待っている。僕はダイレクトアタックされ2300のダメージを負う。
それでも、僕のライフはまだ1700残る。それに手札には死者蘇生のマジックカードがある。これでシナトを蘇らせれば…。





僕の勝ちだ――!





「おっと!忘れるところだった。リバースオープン!トラップカード『砂塵の大竜巻』!
相手のマジックまたはトラップを破壊する。破壊するのは勿論、陸のフィールド魔法『天空の聖域』だ!」


「な…!聖域が」


陸の背後で大きな音立てて、崩れ落ちる天空の聖域。真っ黒な炎の弾が天界王 シナト目掛けて、飛んでいく。
天界王 シナトの翼は小さくなり過ぎて、羽ばたいても、宙を舞う事は出来ず、攻撃を回避する事は出来ない。


「まさか、聖域が破壊されるなんて。でも、その人をおちょくる戦術はいただけないかな。ムカつくし」


陸 LP4000 → LP1600


「何とでも、言えよ。陸が言ったんじゃないか。そんなんじゃ、このバトル・シティで生き残れないんじゃないのかって。
お喋りも、デュエルも、これで終わりだ。――『疾風の暗黒騎士ガイア』!ダイレクトアタックッ!!スパイラル・シェイバー!」


「く……っ!」


陸 LP1600 → LP0










勝敗が決まると、ソリットビジョンは消え、辺りは街の騒然とした音が溢れた。私と陸だけが妙な沈黙に包まれ、ここだけ別世界の様に感じた。
もう消えてしまったフィールドを見えない境界線にして、たった数メートルの距離を越えられずに互いに無言でいた。
不意に陸が気まずそうに表情を歪めて、一度、俯くとすぐに顔を上げて、一歩踏み出した。


「やっぱり、強いね。初心者の僕が敵う訳ないか」


「…陸も、色んな人とデュエルすればもっと、強くなるよ」


「いや、僕はこれ以上デュエルを続ける気は……」


言い掛けて、再び沈黙が訪れそうになった。その前に私も一、歩踏み出して、陸に近付いた。


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