Black valkria




「何故……シャーディーの絵がこんな所に!」


「シャーディー?皆…この肖像画の人は一体、何者なの」


見上げる先はエジプト人の肖像画。私と漠良君以外は酷く驚いていた。
あのエジプト人が一体何だと言うのか、もう一人の遊戯君達は彼と面識がある様なので尋ねた。


「奴も千年アイテムを持つ男だ…」


「千年アイテムを…!」


「首から輪の付いた十字架を下げているでしょ…あれは千年錠。人の心に入り込んで操ってしまう力を秘めているの…」


「千年、錠…」


ほらと杏子ちゃんがエジプト人改め、シャーディーの肖像画を指差した。十字架みたいな物が首に掛かっていた。
千年錠。その名を呟くとまた左胸が、ズキと痛んだ。無意識に胸を押さえていた。





「紫乃さーん?大丈夫ですか、顔色悪いですよ〜…」


グイグイと遠慮の欠片も無く服の袖を引っ張られて我に返った。隣でキール君が心配そうに見上げていた。
お姉さんまでもが、いつの間にか鞄から私の肩によじ登ってどうしたと尋ねてきた。平気っと軽く笑って誤魔化した。





「私こいつのおかげで死ぬ思いしたんだから!」


「そうそう。あん時は杏子の心乗っ取られちまってな!」


思い出すだけでも腹立たしいわ!
彼等はそのシャーディーに随分と酷い目に遭ったと言う。杏子ちゃんの怒りっぷりを見れば相当なものらしい。


「この男も、遊戯の千年パズルの秘密を知りたがってたんだ…」


漠良、お前のあの忌まわしい千年リングの意志同様にな。


「千年リング…。それならもう心配いらないよ…」


もう僕の心を乗っ取らせたりしないもの。





「………」


シャーディー、何故だろう。誰かに似ている様な気がする…誰だったかな。
それからの話はあまり頭に入ってこなかった。少しずつ左胸の痛みは和らいでゆくが、何とも言えない不安感が心の大半を占めていた。
そしてどうしようもなく、遊戯君の顔が見たくなった。もう一人の遊戯君がすぐ側にいるのにおかしいな。





「後、二人お見えになりませんが……まぁいいでしょう。皆さんと共に優勝戦前夜を祝しましょう」


白髪の男が時計を見て、そう頷いた。待ってましたと言わんばかりに城之内君が料理に噛り付いた。


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