Black valkria




「私のターン!ドロー!フィールド魔法『草原』を発動!全ての戦士族・獣戦士族の攻撃力と守備力を200ポイントアップさせる!」


薄暗い洞窟内のデュエル・リングのフィールドが青々とした草原に覆われた。これで戦士族モンスターには有利なはずだ。


「頼むぞ!『七つの武器を持つハンター』!」


傷だらけのスキンヘッドに体中に武器を携えた戦士。攻撃力は低いが、それを補うモンスター効果を持っている。


七つの武器を持つハンター
[ATK/1000 DEF/600]


「フィールド魔法の効果で攻撃力は200ポイントアップする!」


「だが、それでも、ヴァロンには敵いません」


「確かに"今"は敵わない。だけど!このカードを召喚した時、種族を1つ選択してその種族と戦闘する場合このカードの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする!」


選択する種族は――アンデット!





「く…これで戦闘時にはヴァロンの攻撃力を僅かに上回る……ッ!」


「『七つの武器を持つハンター』で『ヴァンパイア・ロード』を攻撃!」


七つの武器を持つハンター
[ATK/1200 → ATK/2200]


剣を構えて躍り出る七つの武器を持つハンター。ヴァンパイア・ロードは振りかざされるその剣を受け止めた。
一旦、2体は後ろへ飛び退き、距離を置いて退治しあった。七つの武器を持つハンターは剣を捨て置き、背負う猟銃を引っ掴んで構えた。
照準を定め、引き金を引いた。――見事、ヴァンパイア・ロードの心臓を打ち抜いた。


「く…!よくもッ」


聖 LP1300 → LP1200





「僕のターン!ヴァロンは葬った罪は重いですよ。レディを生け贄に捧げて『ノーブル・ド・ノワール』召喚!」


青白い肌に尖った耳。顔には深い皺が刻まれている。
ヴァンパイア・ロード達よりもずっと年配でダンディだ。真紅のマントをまるで翼の様にはためかせた。


ノーブル・ド・ノワール
[ATK/2000 DEF/1400]


「マジックカード『威圧する魔眼』を発動。攻撃力2000以下のアンデット族モンスター1体を選択し、このターン選択したモンスターは相手にダイレクトアタックする事が出来ます。勿論、僕はノワールを選択します」


攻撃力2000でダイレクトアタックされたら、初期ライフが満タンでも瞬殺だ。


「少し痛い程度ですが、我慢出来ますよね」


聖さんの顔には「ジワジワ嬲られないだけ、ありがたいと思え」って書いてある。
うわああ、聖さん凄く怒ってる…!





「さぁ……これでフィナーレです」


呆気無い。ヴァロンで倒せなかったのが、ほんの少し残念でしたが。


「ノワール!ダイレクトアタック!」


七つの武器を持つハンターをすり抜け、私に迫る。鋭い爪が振りかざされて勢い良く振り下ろされる。





「まだ…まだ、終われない!」


私はペガサスの城へ、行くんだ!
ぬいぐるみにされてしまったお姉さんを救う為にも、遊戯君達とペガサス城で再会する約束を果たす為にも。


「手札から『クリボー』を捨てる事で相手モンスターから、受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする!」


まだ、フィナーレには早過ぎますよ、聖さん。





「『クリボー』…君は…ただのラッキーデュエリストなのか」


「へ、あぁ…はぁ」


それはあの、凄く…よく……言われます。
曖昧に相槌を打って、がっくりとうな垂れた。


「それとも――僕の予想以上のデュエリストなのか」


どちらにしても…このデュエルの果てに答えはあります。


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