「Welcome!ようこそ、デュエリストの王国へ!!」
城に辿り着くとすぐにペガサスが現れた。銀の長い髪で左目を隠し、赤いスーツを身に纏う男が城のバルコニーから現れた。
お姉さんの魂をぬいぐるみに閉じ込め、遊戯君のおじいさんの魂もビデオカメラに封じ込た、謎の千年アイテムを持つ男…。
「それではルールを説明しましょ!デュエルは全てDMのカードによって行われマース!皆さんがこの日の為に持って来た最強のデッキ!勿論、参加者同士のカードトレードもOKデース!」
長い説明を終えたペガサスは私達の方へ視線を向けた。一瞬、息を飲んだ。長い前髪の間から覗く金色の目…いや、目ではない。
あの目のマークは遊戯君や漠良君の千年アイテムと同じマーク。じゃあ"アレ"がペガサスの千年アイテム…。
「!……フフ」
目が合ったかと思うとペガサスは少し驚いた表情してすぐに妖しい微笑みを浮かべた。
「(ペガサス…待ってな。必ず城まで辿り着いてみせる……)」
微笑みを浮かべるペガサスを強く睨み返した。
「(――やはり、紫乃ガールの心だけ、読み取り辛いデース……)」
彼女も千年アイテムを所持しているのか。読めない訳ではない。読み辛いのだ。
こんな事はペガサスにとって初めてだった。遊戯ボーイに紫乃ガール…楽しませてくれそうデース。
「――では、デュエリスト諸君!健闘を祈ってマース!!」
ペガサスのその言葉を合図にデュエリスト達は散り始めた。それぞれの敵を探し、栄光を掴む一歩を踏み出す為に。
「じゃあ、そろそろ行くよ」
竜崎君と最初に戦わなくちゃいけないから、彼を探しに行かないと。
私も栄光と約束を守る為に最初に一歩を踏み出そうとしていた。
「紫乃!絶対、ペガサスの城で会おうぜ!」
「負けんじゃねぇーぞ!」
「離れていても私達は紫乃の事を応援しているからね!」
「紫乃さん。変な人に襲われたら、頚動脈狙ってチョップ連打だよ!」
「漠良…お前人畜無害な顔して恐ろしい事を…とにかく!俺はデュエルの事はよく分からんが、無事でいろよ!」
「うん…!ありがとう。遊戯君も城之内君も頑張ってね」
「じゃあ、皆!二日後にペガサスの城で」
「あぁ!」
軽く手を上げて、一度も振り返らずに背を向けて歩き出した。
≪……いい子達ね≫
「うん…」
遊戯君達と離れてから、お姉さんが口(?)を開いた。お姉さんからの意外な言葉が嬉しくて照れながら頷いた。
≪ところで、竜崎の居場所に心当たりはあるの≫
「うん、一応。竜崎君は恐竜族デッキを使うから、恐竜族の攻撃力が上がる荒野辺りにいると思うんだ」
私は荒野に向かって足を進めた。
「あの、デュエル中は絶対に喋らないでくださいね?」
思い出して足を止め、お姉さんに再度促した。鞄をよじよじと登りながら、お姉さんは本当に嫌そうに頷いた。
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