Black valkria




気が付くと、上にも下にも三角の…ピラミッドだっけ。それと、えっとな、そう神殿が並んでいた。それも、崩壊寸前の。
宙に浮遊しながら、小さく悪態を付く。ほら、"ココ"は俺には関係の無い場所じゃねぇか。
こんな所に放り出された不運な者は俺だけではなく、遊戯と海馬もであった。目が合うと、それはそれは驚いてもらった。


急に場面は変わる。今度の視界は真っ逆さまだ。広くて薄暗い。オマケに埃っぽい。そんな場所で対峙し合う三つの人影。





「ククク…無残にも王宮は崩れ落ち、貴様を守る『黒き戦女神』も我が手中。貴様は今や裸の王同然…」


絶対の自信に満ちる男の声。それに聞き覚えがある様な無い様な。
そいつの後ろには黒を纏う女が一人。そして、目の前には王と呼ばれた者が静かに男を見ていた。
他の二人は喋らないので、その男が一人でベラベラと喋る。





「天をも震わす我が龍と『黒き戦女神』の力で、貴様の魔術師ごとき聖なる力で跡形もなく消し去ってくれるわ!!」


王に反旗を翻したのは神官らしく。両者の背後で、分厚い石版が音を立てて、独りでに起き上がる。
それだけでも、驚けるってのに。神官の手にはマリクの持つ千年錫杖が。そして王の首には遊戯の持つ千年パズルが下がっていた。


『ディアハ!!』


「出でよ!白き龍!!」


「石板に眠りし黒き魔術師よ!召喚せよ!!」


両者の石版には竜や魔術師…様々なものが描かれており、彼等の叫び声を合図にその石版から、飛び出した。
石版より、召喚されたモンスター。そしてそれを操り闘う者達。その姿は紛れもないデュエリストの姿。


…なんで、俺にこんなのを見せるんだ。
再び、視界は光に包まれ、映像は途切れる。その一瞬変な石版が見えた様な気がした。











視界はデュエル場に戻された。放り出されたみたいに体が言う事を聞かずにガクンッと、両膝を地面に付く。
激しい運動をした訳でもないのに、呼吸が酷く乱れていた。それは共におかしな光景を見た遊戯と海馬も同じであった。
ジリジリと左胸がまだ、まだ痺れている。そこを押さえる手にまで、その痺れが伝わる。


「一体…何んだったんだ…っ」


立ち上がると、まだ頭に残る残像を振り払う様に頭を振る。やって来た俺に気付いたマリクが険しい顔で俺に振り返った。


「お前も、奴等と一緒に一体、何を見た」


「……ただの、過去さ」


神が消えても、デュエルは進む。先程俺達が見た光景をなぞらえているかの様に、それぞれの闘いの僕を従えて。
一人は最強の龍を、一人は最強の魔術師を操り、そしてこのデュエルを制したのは――


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