バトルロワイヤル形式のデュエルをついかっとなって、うっかりと、制してしまった。あれ、こんなはずじゃなかったのに。
これで、誰と闘う事もなく、決勝に進んでしまうが…まぁ、いいか。別にこのバトル・シティを制したい訳でもないし。
ゴンドラは猛スピードで上昇し、しょっぱいニオイが鼻を掠めたと思ったら、光が見えた。
頂上の最終デュエル場とやらはバトル・タワーの天辺で、とてつもなく殺風景な所であった。
第一回戦はマリクVS城之内。勝敗は目に見えているので、煩い遊戯達が寄ってこない内にどこかへ消えてしまおう。
「お前は見て行かないのかい」
早速、踵を返す俺を見て、マリクが声を掛けてきた。首だけ捻って振り返ると、ニタニタとした表情を浮かべている。
そうですね。マリクの神のカードの攻略はどうでもいいし、惨殺ショーの観賞もちょっと、趣味じゃないんでね。
「どうしてもって言うのなら、見てやってもいいけれど」
「おやおや、言ってくれるじゃないか」
今度こそ出口に向かって、歩み出す。丁度、視界のすぐ先に見えるエレベーターで遊戯のお仲間達がやって来たところであった。
「ぼやっとしないで、さっさと降りておくれ」
彼等は予想もしない俺との遭遇にただ目を剥き、言葉を詰まらせていた。咄嗟の出来事に急かされると、人間案外素直に従うものらしい。
皆そそくさと、エレベーターを降り、俺が乗り込んで、ボタンを押す姿を見てから、漸くはっと正気に返っている様だ。
扉が閉ざされ様としたその時、エレベーターの前の小さな人ごみを押し退け、僅かな隙間から、滑る様に飛び込む黒い人影が一つ。
「…飛び込みは危ない。おばさん」
突進してきた影を避け、振り返った。
「こうでもしないと…あなたと、ゆっくり話しが出来ないでしょう」
ゆっくり話す間柄でも、話す事も無いでしょ。飛び込んできたのは紫乃の叔母の千年。エレベーターは動き始めている。
非常に面倒くさいのが乗り込んできてしまったと、内心舌打ちする。多分、露骨に表情にも出ていると思う。
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