Black valkria




「…本当に残忍な人は自分の事を残忍なんて言わないんだよ」


やめろ。そんな目で俺を見るな、寒気がする。


「君は優しいよ。連戦続きの僕等を気遣って、闇のゲームを仕掛けないでくれた」


やっぱり、ちょっと、乱暴だけど…。
違う。そうではない。俺にはそんなつもりなど無かった。本当だ。闇のゲームだってし掛け様としていた。
俺は優しくなんかない。本当に。今更何を言ったところで、もう遅い。





「こんな風に君は闘わなくてもいいんだ。ちゃんと、話し合えば僕達は分かり合えるはずなんだ。友達にだってなれるんだ」





「…全く、」


何言ってんだか。優しいだの。闘わなくていいだの。分かり合えるだの。友達だの?
俺は苦しんでいる訳じゃない。救われたい訳でもない。どうなっても、いいのだ。
ここで俺があんた達とゲームをするのは暇潰しだ。分かり合う必要なんて無い。友達なんてものも必要ない。





「墓地へ送られたアスタルテの第二の効果、発動」


黒を纏う女神が地面に突き刺し残していった邪剣が内側から、黄金の砂が溢れ、崩れていく。
金の砂の山となったそこから、白い手が天に向かって突き出た。


「アスタルテが戦闘以外での方法で相手のカードの効果によってフィールドから、墓地へ送られた時、墓地へ送られた時と同じ攻撃力を持つ『アスタロト・トークン』を1体攻撃表示で特殊召喚する事が出来る」


「な、に…」


その手はか細い女の様に見えたが、瞬く間に逞しいものへと変わっていく。砂から這い出たものは黒を纏う男。
奇妙な光景に器達は息を飲む。漆黒に妖しく輝く鎧に巨大な重剣を両手で構え、それを自身の足元に深く突き刺した。


アスタロト・トークン
[ATK/3800 DEF/0]


「ただし、このトークンは攻撃する事が出来ない。カードを1枚伏せ、ターンエンド」


強い嘆きと共にいつまでも、残り続け、消える事は無い。このゲームが終わるまで、それかアスタロトを倒すまで。





「どうして、」


歩み寄ろうとする姿勢が無い俺を見て、遊戯が喉から、搾り出す様な痛々しい声を出す。
悲しみと、俺にはよく分からなくて表現出来ない表情をして。


「君ずっと、苦しそうだよ。自分じゃ気付いてないの!何かを諦めて、凄い投げやりで。自分なんて、どうでもいいって、誰も自分の事なんて、理解出、来ないって顔して……」





辛いのを我慢して、"君も"一人だけで苦しんでいるの。





器がキレた。涙目で。何故、俺が怒られなければならない。


「僕のターン!……このターンで決めるよ。マジックカード『融合』発動!手札の『バスター・ブレイダー』と場の『ブラック・マジシャン』を融合!表れろ!『超魔道騎士-ブラック・パラディン』!!」


超魔道騎士-ブラック・パラディン
[ATK/2900 DEF/2400]


「パラディンは互いの場と墓地に存在するドラゴン族の数だけ攻撃力を500ポイントアップする。僕の墓地には『カース・オブ・ドラゴン』1体と」


「俺の場には『真紅眼の黒竜』が1体」


そうか…最初に遊戯がトリッキーを特殊召喚する時に手札から、墓地へ送ったのカードがカース・オブ・ドラゴン。
これでパラディンの攻撃力は1000ポイントアップする事に。だけども、アスタロトを倒したところで、俺のライフはまだ余裕がある。


それにこのゲームの俺の切り札はアスタロトではない。


超魔道騎士-ブラック・パラディン
[ATK/2900 → ATK/3900]


|



- ナノ -