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きみはどこ2
結局、何度調べようが方法を変えようが事実は変らなかった。みなみなんてお店はこの市にはなくて、有名らしい板前さんだって存在しない。それじゃあ、ゴミ山の向こうにいる君は一体誰なんだろう。
嘘、ついたのかなぁ。ぽつりと零しても応えてくれる人はいない。ごーくんは忙しいらしい。最近、なぜか会えなかった。携帯でメールをすれば。そんなことも考えたが、結局連絡先を交換してなかったせいで、なにもできなかった。なんなんだよ、もう。
お気に入りのガラス片で太陽光を反射させる。きらきらひらひらする姿が楽しくて嬉しくて仕方なかったのに、今はちっともそう思わなかった。
「ごーくん…」
こんなことなら、さっさと会いに行けばよかった。それとも、会いに行くという段階になって怖くなったのだろうか。そのせいで、僕に嘘をついて逃げちゃったのだろうか。
それはそれで嫌な空想だった。
「ごーくーん…まだ話してないのに…」
本名も連絡先も学校のことも。ごーくんを知らないし、僕のことを知らせてもいない。夢か幻か。そんな風に思えてしまう。実際に、ここで話してたのになぁ。
「ごーくんのあほ」
「じゃあ、みーは馬鹿な」
唐突に聞こえてきた声。それは、すごく懐かしくて思わず目の前がぼやけてしまうほどだった。
悪かったな。ちょっと家の方でいろいろあってこっち来れなかったんだ。慰めるような、優しい声音。なんともいえない気持をこめて、手にしたものを投げた。
いてぇ。抗議するようなそれには答えない。急に来なくなった罰だと思う。いや、約束してないのだから、それは違うのかな。いつのまに、この時間が大切になったんだろう。ごーくんには悪いことしたや。
「投げてごめん…」
「……まぁ、連絡なく急に何日も来なくなったのは、こっちだからな」
けど、携帯投げンのはどうかと思うぞ。ぶっ壊れたらどうすんだよ…。謝罪を受け入れてくれたのかどうか微妙なところだったけど、いつもの調子に戻っている。よかった。
「これからもさ、こーゆーことあるよね」
そう言えば、まぁなって返ってくる。僕も行方不明になるかもだしって言ってみた。ごーくん、何も言わない。悪かったって。ほら、だから、連絡先交換しよう。な。まるで幼い子を宥めるみたいだ。僕、ちっちゃい子じゃないよー。
「とりあえず、交換しとくぞ」
そう言われて、携帯はそっちに投げたことを思いだす。ついついポケット探しちゃった。さっきは、ごーくんがうまく受け止めてくれたけど、運動神経に自信のない僕は、投げられたものはほぼ百パーセント落とす。受け取りに行こうと思って、立ち上った。
「ごーくん、そっち行くね」
おー。みーは、鈍いからな。こっち来い。酷いや、ごーくん。
(Now, let's go to meet. )