夕焼け色

006

 同性に告白された加東は、海を映す目をただ見開いて茫然としていた。かなりのショックだったみたいだ。その顔も、やっぱり整っていてすごく綺麗だと思う。

「ちなみに、恋愛の意味だからね」

 言ってしまったから、肝が据わったみたいだ。僕は、自分でも驚くほどあっさりと肯定した。

「マジ、かよ…」

 加東は、力の抜けた声を零した。額に手をやり、落ちつかなさげに視線を揺らす。いつもは強気な態度の加東のその姿がやけにかわいく思えて、自身の好意を改めて確認した。
 くすくすと笑う僕に気付いた加東が、恨めしそうに僕を見る。

「ごめん。だって、かわいかったから」
「…俺は、不良で怖いって言われてるんだけど」

 ぼそぼそと反論する加東。今の加東を見れば、誰でもかわいいと思うんじゃないだろうか。それを伝えようかと思ったけど、ひとまずやめておくことにした。きっと拗ねるだろうから。拗ねた加東を想像して、また笑みがこぼれる。
「吉岡」
 ふいに呼ばれて僕が彼を見ようとしたとき、視界が一瞬で変わった。視野全てに広がったオレンジと青。その目は、カラコンではなく自前のものだったようだ。新しい情報が追加され、どうしてこんなにも彼の顔が近いのだろうと考える。

「ッ!」

 暖かいものが口唇に触れている。それが何を意味するかを理解したと同時に、加東は離れていった。
 夕陽に照らされたわけでもないのに、頬が赤くて、緊張したような強張った顔。凛とした雰囲気があまりないのに、そのきらきらと光る眼がかっこいいと思った。

「俺も、吉岡のこと好きだ。ちゃんと、恋愛の意味で」

 それを聞かされた途端に身体を暖かいもので包まれる感触。ぼっと火がつくように体温が上昇した。

「吉岡、顔真っ赤だけど」
「し、仕方ないだろ…! キスなんて初めてだったんだから」
「おおー、ファーストキスをいただいたってわけか」

 喜色満面な声。加東に抱きしめられて、自然とたくましい胸元に顔をつける形になっているから、こもったように聞こえる。少しだけ、加東の汗くささが香る。

 肩で息をしていた加東を思い出し、もしかしたら僕に会いたくて走ったのかなと考えた。胸一杯の嬉しさと恋しい気持が、涙となってぼろぼろと零れていく。遠く加東の心配そうな声を聞き、僕の想いが加東のシャツに浸みこんでいくのをぼやけた視界で眺めていた。
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