肺が苦しいんだ


放課後の教室には夕日が差し込んで君を照らしている

「花宮君」

形の良い唇から紡がれる俺の名前

「どうしたの?」

「相談があって」

「もちろん、僕にできる事ならなんでも言ってよ」


自慢の猫被りが君にバレることは決してない。だって君は馬鹿だから。


「最近変な人に後をつけられてて怖いの」

「それで?」

「だから、一緒に帰ってくれない?」


笑ってしまいそうになるのを必死に堪える。やっぱり君は馬鹿だ。

「それよりもっと効果的な方法があるよ」

「何?」

「僕と恋人のフリをすればいい」

「それは…」

「あぁ、ごめん。無神経だったね」

「花宮君が迷惑じゃなければ」

「え?」

「よろしくお願いします。真、くん」


疑うことを知らない澄んだ瞳で真っ直ぐに見つめてくる君


「こちらこそよろしくね、名前」





「帰るよ名前」

「はーい!また明日ね」

話していたクラスメイトに別れを告げてこちらに小走りでやってくる名前。さりげなく手をとって歩き出す


「今話してたの誰?」

「同じ委員会の加藤君だよ、それより真くん手…」

「あんまり他の男と喋らないでくれるかな?」

「えっ、」

「仮とはいえ僕は彼氏だよ?見ていて不快なんだけど」

握った手に力を込めれば顔をしかめる名前


「手、痛いよ」

「あぁ、ごめん。でも君が悪いんだよ?あんなに仲良さげに話してたら僕が彼氏のフリをしている意味はなくなっちゃうからね」

「…ごめんなさい」

「わかればいいんだよ。帰ろうか、家こっちでしょ?」


優しく手を握り直して彼女に歩道側を歩かせる。



君があの男と喋っていた時、僕がどんな気持ちだったかわかるかい?とても苦しくて男に殺意が湧いた。それと同時に君をめちゃくちゃにしたくなった。大切な君に嘘をつかなくてはならないのはとても苦しいけれど、僕は君のためならどんなことでもするよ。


だから早く僕に堕ちてしまえばいい、世界で一番幸せにしてあげる。







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