春がくる前に
双熾と凜々蝶が付き合い始めて半年が過ぎた。
付き合いだしてからの二人は表面上はかわらなかったがきっと少しずつ変化していっているのだろう
お互いを知って
色々な事を経験して…
私だけ、何も変われないまま。
「僕はバイトをする!」
凜々蝶のラウンジでの宣言に一同は騒然とした
A.甘味処
B.メイド喫茶
うん、どちらでも似合うね!
「いいんじゃ「SSとして賛成しかねます。」
「そうだよ凜々蝶!」
「予想通りの反応だな、御狐神くん。というか名前は賛成してなかったか!?と、とにかく…君が過保護な事は知っている、だが今回だけは譲る気はない!」
「まーいんじゃねー、バイトぐらい。」
C.中華飯店
あ、新たな選択肢だ
名前は何か思い付いたようにニヤリと笑うと双熾に近づく
「双熾、凜々蝶がメイド服とかチャイナ服とか着てるの見れるんだよ?仕事してる健気な凜々蝶を好きなだけ写真に納められるんだよ?ムービーとか撮れちゃうんだよ?」
「!!」
名前の言葉に一瞬反応するがすぐに言った
「凜々蝶さまがメイド服で他の男に奉仕するなど嫉妬で気が狂いそうですから。」
「双熾はメイド服がいいんだ。」
「チキチキちよたんVSそーたんガチンコバトルー!!」
話は勝手に進み残夏の一言でバトルが開始されることになった
結果はもちろん双熾の圧勝
凜々蝶は双熾が分身できるのを知らなかったようだ。
「それでは皆様お騒がせしました。」
双熾は凜々蝶を軽々と抱き上げて言った
「また明日…」
ラウンジに取り残された一同
「これも一種の不器用なカップルなのかな〜?」
「「そんなかわいいもんじゃないと思う」」
凜々蝶がバイトなんて考えたのはきっと双熾の誕生日のため。
不器用なようで着実に前に進んでいる彼ら
なんだか置いてきぼりな気がするのは私だけだろうか?
「名前。」
考えているとみんな部屋に戻っていて残っていたのは残夏だけだった。
「そーたんの事好きなの?」
「え?」
「ちよたんとそーたんが一緒にいる時、自分がどんな顔してるか分かる?」
この感情はやはり恋なのだろうか
残夏にもわかってしまうなんてよほど表情に出ていたんだろう
「好き、じゃないよ。」
好き、嫌い、分かんない
「本当に?」
「だって凜々蝶の彼氏なのよ?人の男好きになるなんて性格悪いじゃない。仮に私が双熾の事好きでもそうなったら忘れるわね!」
「…そんなこと、できるの?」
今まで何度も思い出してきた大切な思い出
今までの人生をリセットする事なんてできる?
「…それは、」
「ごめん、悲しい顔をさせたいわけじゃないんだ。」
「…ありがとね、」
半年前から執拗に絡んでくるようになった残夏
「慰めてくれてるんだよね、残夏は優しいね。」
今はまだ残夏とのこれからは考えられないけれど
月日を経て
まだ私が“ココ”にいて
双熾が特別じゃなくなって
心に余裕ができたらその時は、
私から気持ちを伝えてみよう。
可能性は限りなくゼロに近いけれど
今がダメなら次で、それでも無理ならその次で…
何度でも廻る一生で、いつかは…
その時はそう思っていた
次の春がすぐそこまで来ていると知らずに…
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