交換


「おはようございまーす」

眠たい目をこすってラウンジに行くと懐かしい声が聞こえてきた


「おはよう、ブタども!」

カルタが鎖に繋がれていて蜻蛉がいつも通り騒いでいる…


「え、蜻蛉!?」

どうやら寝ぼけていたらしい

「蜻蛉おかえり!」

「久しいなM奴隷よ!」

「帰ってくるならなんで教えてくれなかったのよ!昨日のメールでは何も言ってなかったじゃない!」

「悦いぞ悦いぞ、その怒りが私を優位に立たせる。貴様はやはりM!」

そんなやりとりに震える渡狸

「アイツとメールなんかしてたのか!?」

「渡狸震えてる、情けなーい♪」

「う、うるせー!」

「まぁいっか、ご飯持ってこよ。」

カウンターに名前#は向かう


帰ってくるとみんな手にいかがしいものを持っていた


「貴様にもあるぞ!」

どうやら沖縄のお土産らしい

「名前のは確かここに…」

そういって仮面の中に手を入れる蜻蛉


(((((どっから!)))))

「あった、これだ!」

名前に渡されたのは貝殻のネックレスだった

「「「は?」」」

驚きのあまり間抜けな声を出した一同


「かわいい、ありがとう!」

目をキラキラさせる名前に蜻蛉は言う

「どうだ、私の愛人にならないか?」

「みてみてざ…連勝!貝殻ついてる!」


残夏の名前を呼びそうになったが一昨日の事を思いだし咄嗟に連勝を呼んだ

「貝殻に耳をあてると海の音がするらしいぞー。」


そして完全に無視された蜻蛉

「蜻たんはずっとアタックしてるけど振り向いてもらえないんだよねー♪」

フフッと笑う残夏

名前はフレンチトーストを食べ始めた

頭の上を婚約者とかM奴隷とかいう言葉が飛び回る


「…ふーん、凜々蝶が婚約者だったんだ。」

ちらっと双熾を見るとなんとも言えない顔

「…今日は土曜だ帰ったらゆっくり話そう許嫁殿。もうひとつ大事な話があるのだ。」

「おいしかった…」

「あ、お皿下げとくわよ。」

空になった皿を野ばらが下げる

「そうだ名前、」

ラウンジを出ていこうとしていた蜻蛉だったが止まって

「貴様にも関係する話だ。」

意味深な笑みを残して出ていった


「…凜々蝶!」

「な、なんだ…」

「昨日の続き、また今度ね。」


落ち込んでいる凜々蝶にそう言うのは優しさか気紛れかは彼女自身にもわかっていないのだった





「今日は婚約者同士で食事をする、貴様の迎えは不要だ。」

「…かしこまりました。」

「そうだ許嫁殿もいない事だし名前に話してみてはどうだ?まだ引きずってるようだからな。」

「…………」






「あれ、今日のお迎えはなし?」

ラウンジには元気がなさそうな双熾がいた

「蜻蛉さまがお迎えにいかれましたので…お食事も不要だと。」

テーブルにはすでに食事の準備がしてあり、双熾はそれを片付けていた


「片付けちゃうのはもったいないわよ…私が食べる。お腹空いてたの。」

本当はあまり空いていないが名前は席についた

「…では給事させていただきます。」

ニコッと双熾が笑う

…そんな風に笑わないでよ


「凜々蝶がいないんじゃ仕事にならないよね。」

空になったグラスを置けばアイスティーが注がれる

「はい、お部屋のお掃除や買い出しも終えてしまったので何をしようかと…」

前菜を食べ終えるとちょうどいいタイミングでメインが運ばれてくる

…昔に戻ったみたい

凜々蝶には申し訳ないけど蜻蛉には感謝だわ

「…じゃあたまには交換しましょうよ、私があなたのSSをやるわ!」



だからお願い、一時だけでも私を見て…


双熾は驚いた顔をした

「いいでしょ?」

心配そうに聞けば彼はNOとは言えない

彼を知っているからこそできる狡い方法


「…はい、ではよろしくお願いします。」

皿を下げると双熾は笑って言った

「では、準備ができましたら僕の部屋に来てください。」






コンコンッ

「失礼いたします、双熾さま。」

御狐神の部屋に入ると彼は私服でソファーに座っていた

「その格好は…」

「カルタのをこっそり借りてきちゃいました!」

名前はSSのスーツを着ていた

「何をいたしましょうか、双熾さま?」

「…呼び方はいつも通りで結構ですよ。」

双熾は苦笑いして言う

「そう?じゃあ双熾、何かしてほしいことはある?」

とりあえず部屋から持ってきた紅茶セットでお茶の準備をする

「そうですね…では甘いものが食べたいです。作ってくださいますか?」

「えっ…」

……

「名前さまは料理があまりお上手ではないのですね。」

「もう、そんなこというなら食べなくていいわよ!」

「そんなつもりで言ったわけではございません。いただきます。」


……


遠い過去のやりとりと重なる

「甘いもの…なにがいい?」

冷静を装い名前は聞いた


「クッキーがいいです。」

昔、彼に作ったのもクッキーだった

「わかったわ、ちょっと待ってね。」

名前は冷蔵庫を確認し、クッキーを作り始めた。

だから知らなかったのだ



双熾が冷たい瞳をしていた事に







「…できたよ!」

一時間ほどたってクッキーが完成した

「ありがとうございます。えっと…」

「見た目が悪いのは気にしないで!あ、紅茶を淹れなおすわ。」

名前はポットにお湯を注ぎ先程とは違う紅茶を淹れた


「…この香り、」

「飲んでみて。」

双熾は紅茶を飲むと言った

「ルフナ…でしょうか?」

「正解、さすがね。」

双熾は立ち上がるとキッチンに向かった

「…どうかした?」


「ルフナはミルクティーで、でしょう?」

戻ってきた双熾の手にはミルク

「本当に物知りよね。」

「いえ、僕ではありません。」

双熾はミルクをテーブルに置くと名前に向き合った


トクンッ

心臓がはねる

「教えてくださったのは以前のあなたですよ、名前さま。」

双熾の2つの瞳がまっすぐに見つめていた

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