無言で真田を昨日の空き教室まで連れてきた。


「なんであんなことした」

「関係ねぇだろ」

「ないわけないだろ」

真田を睨みつける。気まずそうにそらされる視線。


「別に、あん中で一番つぇーやつとヤろうとしただけ」


その言葉に全身が震えた。
真田のヤケクソじみた言葉も、表情も、行動もすべて俺がさせた行動だ。

わかってる、でも、腹立たしい。

あのままあいつが呼びに来なかったら。

「なんで、そんなこと」

「なんで?」


真田の目が俺に向けられる。


「なんでって、なんで?マジで言ってんの」

「真田、」

「うるせぇよっ」

「っ、」

今までにない叫び声。

「てめぇがいつまでも中途半端なのがわりぃんじゃねぇか!いつまでもいつまでも待ってんのがバカらしくなって、だったらさっさと他の奴とって、」

「やめてくれっ」

「じゃあヤレんのかよ」

「っ、」

「お前は俺とヤレんのかよっ!俺ばっかがお前のこと好きで、期待して、ばかみてえじゃねえかっ!ほっといてくれよっ、俺はそこらで適当にっ、」



――――バンッ


「いって」

「…………」

気づいたら真田を床に押し倒していた。顔の横に手をつき、逃げられないようにする。

他のやつに?真田を?
ありえない。だったら、そのまえに、俺が。いや、前も後も誰かにやるなんて。


「おい、三浦……」

「違う」


真田の横から手をどけて、口元を覆う。
俺は今なにを。


「違う違う違うっ」

「おい、三浦……?」


こんな風に勢いだけで真田と触れ合いたいわけじゃない。真田は壊れない。強い。だけど乱暴にしたいわけじゃない。


「おい、三浦、お前……」

「真田――……」


真田の手が優しく俺の頬に触れる。


「なんで、泣いてんだよ」

「……え?」


泣いてる?誰が?俺が?


「どうしたんだよ、なにが違うんだよ、なあ、」

「真田」

「なに」

「真田ぁ」

「どうしたんだよ、三浦、落ち着けよ」

泣いていた。
自分でもわからない。止められない。
真田、俺はようやく決意ができた。
覚悟をした。


「真田、好きだ」


最初は興味本位だった。
途中から怪しくなった。
でも、お前と普通じゃなくなる決意ができなくて、怖くて、でもやっぱりお前が。


「好きなんだ、だから、乱暴にはしたくない」


大切にしたい。今までの分も。これからはすごく大切にどろどろに甘やかして、それで。


「優しくさせてくれ」


真田の顔に涙が落ちる。
それが頬を滑り落ちて、その跡がキラキラと輝いて。


そこにキスをした。


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