「あ、目ぇ覚めた?」

「……?」

「すごい無防備なかっこで寝てたからさあ」


目の前の机に頬杖ついてこっちをみてるこいつは、たしか同じクラスの奴だったと思う。

めったに行かない教室で見かけたこいつは――……。


『いたずらしちゃった』


こんな風に笑ってたっけ。





はっきりしない頭でようやく認識したのは、目の前にいるこいつは俺のクラスの真面目野郎だった。名前は確か三浦。テストでは毎回1位で、さらにスポーツ万能、性格も悪くなく完璧だと女たちからさんざん聞かされた。女や教師どもがどう思ってるかは知らないが、俺にはどうもうさんくさくてしょうがなかった。


「喧嘩なら誰にも負けないはずの君が、こんな風にされるのってどんな気分?」

「ふっ、てめ、ざけんなよ……っ」


その予感が見事に的中している現在である。両手を椅子の後ろで拘束され、足も片方ずつ椅子の脚に拘束されていた。


拘束をどうにかしようともがいても、ただガタガタと音を立てるだけで、下手するとそのまま横に倒れて余計みっともないことになってしまう。

そしてさらに厄介なのは。


「つーか、てめえ、なに飲ませた」

「ん?べつに、ちょっと興奮する薬」


そう、体が熱いのだ。
内に溜まった熱を吐き出そうと、俺の下半身が張りつめているのがわかる。


「苦しい?」

「や、めろっ」


そしてあろうことか三浦は俺のものへと手を伸ばしてきた。


「ごめんね、真田は血の気多そうだったからさ」


にこりといつもとは違う種類の笑みを浮かべながら、前をくつろげてきた。


「分量多めで飲ませちゃった」


こういうの使うの初めてだからさ、と笑顔いうこいつの顔面を殴ってやりたい。





「は、やめろ、まじで」

「なんれ?きもひーくせに」

「しゃべんなっ、あっ」


あろうことか俺は三浦の口ん中でイった。

薬が入っていたとは言え、男の口ん中でイくとか。

俺がショックを受け放心していると、三浦は口ん中のものを吐き出したようでこちらを見上げた。


「これ、わかる?」

「………は?」


一瞬遅れて理解した。それは。


「ど?自分のイキ顔見るの。俺的にはエロくて好き」

「なんで、んなもん」

「決まってんじゃん、真田で遊ぶため」

「遊ぶため?」

「そ。俺の言うこと聞いてね。じゃないとなに言うかわかんない」

「はあ?」

「真田に脅されてフェラされました、って言う」

「んなこと誰が信じっかよ」

「品行方正な俺と素行不良な真田と、どっちが信用されると思う?」

「……………」

「ちなみに写真は俺の趣味。でも真田がへんな行動したらネットに貼っちゃうかも」
「くそが………っ」

「じゃあよろしくね、真田。今日はこれでおしまい。……次は、真田ん中に入れさせてね」

「っ、はあ!?」

「じゃあね」


手と足を解放されたが、まだ痺れが残っていて三浦を殴れなかった。

俺はそのとき怒りでよくわかっていなかった。ありえない日常がやってくることを。


すすむ #




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