今日も総志は俺を殴る。
あれ、なんでだっけ。
ああ、帰りの時間が遅くなったんだ。
「てめぇ、考え事とは随分と余裕じゃねぇか。あ?」
「いっ!」
俺の髪を持ち上げて顔を近づけてくる総志。あぁ………、痛みよりも顔が近付くことが嬉しいだなんて、俺も末期だな………。
そのまま、総志に口づけてみる。
一瞬、ほんの一瞬触れるだけのキスけれどそれだけで十分だった。
あなたの唇は綺麗な弧を描き、その拳は俺を痛めつけた。俺の返り血があなたにつく。
それが酷く汚いことに思えて、興奮した。
「あぐっ」
「おい、こら。今日は誰とアソんでたんだよ、ああ?」
「遊んでな……いっ!……っ……ど、ろが混んでたっいああっ」
俺は痛みに顔を歪める。俺が喋っている途中にも殴られ、蹴られ、髪を掴まれ。今暴行されている場所は同棲しているマンションの部屋、の玄関。
どっかの誰かが事故って道路が混んでて帰るのが遅れた。遅れたっていってもまだ7時ちょい過ぎなんだけど。
「てめぇ、7時過ぎてんだけど」
「あっ……いやっ……まっ、て……そおじっ」
そのちょっとの遅れで俺は帰って来て早々玄関で突っ込まれている。
「いた、い……くるしっ、ぁあっ」
慣らされもせずに突っ込まれたもんだから血ぃだらだら。立ったままのため太ももを伝う感触が気持ち悪い。今は壁に手をつかされ、総志に腰を押さえられ貫かれる。
「ちょ、まじ……も……ちから……入んな……あっ、やぁっ」
腰をさらに激しく打ち付けてくる。
「っせーなぁ、めんどくせ、放すぞ」
「え、ちょ、あっ」
そう言うと総志は本当に腰を支えていた腕を放し俺の顔を挟むように壁に手をついた。俺は必死に壁にしがみつく。今力を抜いて床に倒れてしまったら、どうなるか。
「うっ……そぉじ、おねが……」
「ん?あぁ、わりぃ」
「あっ、ちがっ、ああっ」
「動くの、忘れてたわ」
「……っ、あっ」
「んだよ、力入んじゃん、ゆず」
総志は楽しそうに腰を動かす。時々イイところをかすめるもんだから俺の脚はどんどん限界に近づく。
「ちがっ……そぉじ、だめだ、っ……て……ねぇ……あっ、ちょ、ぁんっ」
俺の声など聞こえていないように振る舞う総志。やばい……膝が、そう思うと同時に膝が折れ倒れる。
「はっ、はぁ、はぁっ」
俺は荒い呼吸を整えながら総志を見上げる。倒れるとき総志が抜けていくのにすら感じる俺って。
「てめぇなにやってんだよ。しらけるわぁ〜」
「だっ……て、」
「は?俺のせいなわけ。あ、そう」
「ちがっ、いっ」
言い終わらないうちに腹部に激痛が走る。
「違わねぇだろ」
前髪を掴まれ顔を殴られる。
「あー、いてぇ」
殴った利き手である右手をぷらぷらさせる総志を見上げる。
「なんだよ、その目」
今度はお腹を蹴られた。その衝撃で仰向けになる。首に足が上げられ、踏まれる。
「あ……はっ…そ……じ……」
視界が滲む。苦しい。苦しいけど。
「イケよ。どえむ野郎」
俺は総志の妖艶な笑みをみて達した。