「エーフィ…」
「ん?どうしたとめさん?」
またお焚き上げしてもらおうかと手紙を書いているとき、膝の上からとめさんがおりて扉をカリカリと引っ掻き始めた。外に出たいのかな。
ハイハイするような姿勢でとめさんに近づき、片手でほらよと扉をあけてあげた。
すると、
「おや、中在家さん」
「もそ…」
扉の向こうにいたのは中在家さんでした。
「あれ、本の返却日今日でしたっけ?」
「…違う…」
では何用かしら。
とめさんは扉をあけて中在家さんの存在を知らせたかったのだろうか。もう興味がないからか今度は中在家さんにじゃれ始めた。
ふと、とめさんは向かって右側に視線を送って動きを止めた。何かあるのだろうか。
そして、中在家さんの手には、縄。
「?」
「痛い痛い!やめろ長次!」
グイッと引っ張り、現れたのは
「、…七松さん……」
あの日、私がここに来たときからずっと私をくのいちとやらと疑ってかかっていた人だ。そして、あの日から一度も顔を会わせていない。
食満さんや中在家さんに「根はいいやつなんだ」という話を何度もされたが、ちょっと怖くて、自分から会いに行くことはできなかった。
「……小平太が、…翔子に、謝りたいと………」
「え、」
手に持つ縄を引っ張り、七松さんの背中を押し、部屋に縄でぐるぐる巻きにされた七松さんが入ってきた。
「……」
「……」
向かい合うように座り、七松さんの視線とかちあう。
正直、怖いです。
「…その、あの、……悪かった!!」
「へ!?」
「…私はずっとお前を間者だと思っていて……それで、初日にあんなことをしてしまって…」
「…あ、あぁ」
「……もう、その、頬は…」
「あ、これはもう大丈夫です」
「そ、そうか…」
一方その頃中在家さんは、とめさんと戯れていた。
「すまなかった。右も左も解らない世界で苦しんでいたというのに、あんなひどい言葉を投げ掛けたあげく…女であるお前の……か、顔に傷を作ってしまうなんて…」
「……」
「だが、留三郎とかに話を聞いたんだ。お前のこの仲間の過去とか。翔子が何のために旅をしているかというはなしも。お前は本当に間者ではなかった。
……傷つけ怖がらせて、自分勝手だというのは解ってる。だけど、どうか、私を許してほしい…!」
「嫌です」
「え!?」
あまりにもザックリと回答をしたせいか七松さんも中在家さんも耳を疑うようにこっちを二度見した。
これは私の本音だ。
すごく怖かった。やはり拒絶されてしまったと、傷ついた。
「…今さら都合が良すぎます…。私、本当に怖かったんですから……」
「…すまん」
「確かに勝手にあなたたちの世界に飛び込んできたのは私です。でも……」
「…本当に、悪かった……」
「許しません。だから、そのかわりに、」
そして、私は腰についたネットボールに手を伸ばした。
「私のこへいたと、仲良くしてください」
その言葉に、パッと笑顔を作った七松さんと中在家さん。
そして、「正気かお前」という顔をしてくるとめさん。
そう、この子だけは一筋縄ではいかないのだ。
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ちなみに
とめさぶろう→モンスターボール
いさく→フレンドボール
ちょうじ→モンスターボール
こへいた→ネットボール
もんじろう→ハイパーボール
せんぞう→ゴージャスボール
に入って寝んねしてます。