"恋を語る接吻け"の続き




「…、シズちゃんの、ばか、っ」
そう吐き出した涙声は俺が思っているよりもずっと上擦って居て、みっともない。そんな事を心の片隅で思いながら、まるで本心ではない決まり文句をシズちゃんに向かって告げた。LEDに変えたばかりの電球は何時もより明るいが、今は彼が居てその明るさを確認出来ない。そうして、ぼんやり、と涙の膜が張った瞳でシズちゃんの姿を捉え、僅かに息を漏らす唇に視線をやる。すると、彼は吸い寄せられるように、俺の唇に触れて、呼吸をするのと同じように自然に、甘い甘い口付けを落とした。ちゅ。触れるだけの唇が熱い。益々ぼんやりと霞む脳内は完全にこの空気に流されていて、もう抵抗の余地なんて俺には残されていなかった。
そっと離れた唇が、しっとりと濡れて、室内の光の加減できらり、と光る。その光景は恐ろしいほどエロくて、息を飲めばシズちゃんは、その輝かしい瞳を瞼で隠して心底幸せそうで、ちょっぴり泣きそうな、蕩ける笑顔で笑った。その顔で俺の心は一瞬で射止められる。メロメロもいい所だ。ていうか、こういう時だけ、シズちゃんは本当にずるい。いつも、俺の事追っかけ回して何かと文句付けるくせに。そうやって笑うだけで、俺は君の事が好きだって、心から思ってしまう。君が幸せであるように、とか、君と一緒に幸せになりたいとか。そんな高望みな事まで思ってしまう。悔しい事ながら、ね。本当に君って奴は、俺の気も知らないで酷いバケモノだよ。
「臨也、いざや、」
少し幼い声で、シズちゃんは俺の胸に頭を押し付ける。ぐりぐり、とその勢いも然ることながら、その度に金色の髪がさらり、さらり、と首元を擽るものだから、くすり、と少しだけ笑みが零れた。まるで子供だ。親に縋りつく子供。子供でもこんな露骨な事しないかも知れない。残念ながら俺とシズちゃんの間には子供が居ないから確認出来ないのが残念ではあるが。『ちゃんと聞いているよ。此処に居るでしょ。』まるで魔法でも掛ける様に指先に髪を絡めて言い聞かせる。そして、僅かに上がった額にちゅ、とキスをして、細められた瞼に触れた。一つ歳を取った分か幾らか老けたように感じたのを口に出す事無く、俺は感じた幸せを噛み締めながら、シズちゃんの頭を肩に引き寄せる。君のおかげで俺のプランは台無しだけど。第二プランを立ててみた。ほら、俺って頭いいから。君が到底計り知れないであろう速度で物事を考えられるから。やっぱシズちゃんとはデキが違うね、さすが、俺。とは口には出さずに、より近くなった形のいい耳殻に唇を寄せて、赤くなった淵に唇を付ける。彼の息遣いですら、俺の物等しいこの距離に無意識に釣りあがった口元を隠す事無く(実は)精一杯ひねり出した第二プランの実行を試みた。
別に、どうって事は無い。ただこの距離で、彼の名前を口にする。それだけ、あとシズちゃんが自然と実行してくれる。俺の手間を極力省いたなんてスマートなプランなんだろう。と心の中で盛大に自分自身に賛美を送り、頭を引き寄せた腕を今度は首に回す。より一層近くなった距離で、ごく自然に重なる唇は次第に呼吸すらも奪い合う激しい物に変わっていった。
「ん、んちゅ、ぅん、は、ぁ…」
「……ん、いざや、」
僅かに舌足らずに俺の名前を連ねたシズちゃんは許可を取る言い回しにも似た其れを口にするや否や、首に回された腕をふかふかのソファに縫い付ける。そうして、すでに着てないのと同様のびりびりに破けたシャツを胸元までたくし上げると、迷わず胸を目掛けて唇を押し付けた。ぬちゅり、と湿った舌全体が包み込むように胸元に咲いたソレを絡め取る。その途端に熱を持つソコはシズちゃんに開発された場所で、認めたくもないが真実なのでしょうがないと、最早諦めの域に入った俺は、今の今まで彼の唇が重なっていた唇から甘ったるい声を漏らした。
ぺちゃり、と何とも言えない唾液の音が空中に舞っては俺の声と混ざり合う。暫らくシズちゃんの口の中で遊ばれていたソレは、彼の唇を離れた頃には赤く熟れていて、じんじん、と痺れていた。馬鹿になるくらい、熱くてきもちいい。シズちゃんとの行為を一言で表すならこの一言に限る。そして、俺は今正に進行形でその言葉の波の真っ只中に飲まれている事になる。ばかになるくらい、あつくてきもちいよくて、唇からひっきりなしに、溢れ出す声は言葉ではなく音に近い。沸騰するように熱くなる全身の血液は巡り過ぎて、眩暈がしそうだった。くらり、くらり。揺れる世界と、無意識に張った涙の膜が更に視界を悪くする。一度瞬きをすれば、はらり、と零れ落ちる其れを、シズちゃんは躊躇する事無く舐め取り、すりすり、と頬を擦り付ける。珍しく所々生えた髭がしょりしょり、と痛気持ちよくて、俺も頬を押し付けるとシズちゃんは、再び心底幸せそうに笑った。
そして、触れる、と言うよりは、形を確かめたりする行為のように、ボトム越しに擦り付けられるシズちゃん自身。俺のも、彼の同様に熱を持ってボトム越しに膨らんでいて、どっから俺でどっからシズちゃんか分からない感覚に俺も幸せで、息をするも忘れてしまう。かちゃり、かちゃり、とベルトを剥ぎ取ろうと躍起になる、シズちゃんに「待って」って言うのも。けれど、これだけは言って置かないといけない。シズちゃんの、そのズボンの下で立派に反り勃っているであろうビッグがマグナムを俺の中に突っ込まれて頭がホワイトアウトする前に、ね。
「ねえ、ね、シズちゃんストップ、聞いて、ね、ちゃんと聞いて、」
「んだよ、いいところだろ、」
「だって…ちゃんと伝えたいし。一回しか言わないからちゃんと聞いててよ。」
いい?と首を傾げる。すると、シズちゃんは早々に焦れたように舌打ちをして、早くと次の言葉を促した。なーんか、ムカつくなあ。その態度。俺がせっかく愛の言葉を囁いてやろうとしてるのに。頼まれたって本当に一回しか、言わないからね。もう一回、なんて、絶対言ってあげないから、ちゃんと聞いて、その態度を改めろ!馬鹿シズちゃんめ!

「シズちゃん、生まれてきてくれて、ありがと。俺に出会ってくれてありがと。俺のこと、好きでいてくれてありがと。」

(だいすきだよ、誕生日おめでとう)






愛を形にした人









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