"ローズマリーが囁くの"の続き




「すげえな、ガキみてえ、」
しょり、しょり、と剃刀に皮膚が擦れる音が耳を犯し、ひやり、とした鋭利な先端が、その場所をなぞった。丸見えだ、なんて恥ずかしげもなく掠れた声で呟いたシズちゃんがぬるり、と滑った其処を撫でるものだから、無意識に顔に熱が上がる。見たくない。こんなもの見たいわけが無い。そう頭の中では考えては居るものの、何時かこの事実を受け止めなければならないな、などと俺は理由を付けながら、好奇心には逆らえず、抱いた枕から顔を覗かせて、彼の顔を見上げた。惨劇。飛び込んできた光景はそんな言葉がこの光景にはお似合いだ。シズちゃんの肩に乗った自分の痩せ細った足と、まるで難しい物でも見てるみたいなシズちゃんの真剣な顔。それから半勃ち状態の俺自身が其処には聳えて居るが、それですらいつもの光景が違っていて、再び顔が熱くなる。まんぐり返しなんて、この人生の中で何度やってきただろう。いや、絶対に初めてだ。こんな恥ずかしい。馬鹿みたいな格好。最悪だ。だが、この体勢よりも酷いものが此処には存在している。この目の前の光景に比べたら大した事ではない。何故なら俺の其処には一ミリ足りとも下生えなんて物が無くなっていた。其れはもう綺麗さっぱり。見事なほどに。本当に、剃られてしまった。まさか、とは思ったが、これは夢ではない。こんなの、俺の悪戯なんて比ではないんじゃないかなあ、シズちゃん。だって、俺はただ毛を染めてやっただけだ。主に髪の毛と、それから、まあ、下もだけど。(現にシズちゃんの陰毛は今も金色になってるけど)でもそれだけだ!直せば元通りになる。だけど、俺のはどうだろう。元通りになるまでに何ヶ月掛かると思ってんだ!その前に元通りになったとしても、俺の心の問題はどうする気なの?もう、ほんと俺立ち直れないよ?どうしてくれんの!?
なんて、口で言えるはずも無く、俺は唇を噛んで抱えた枕に顔を埋め直した。正直、油断したら声を上げそうなくらい、興奮してるし、シズちゃんが触れる指の感触が直に感じられる。気持ちいい。なんて一言では言えない感覚だ。ざわざわと首筋を粟立ち、開きっぱなしの膝に少しだけ締めて、枕に熱い息を漏らす。すると、一瞬にして目の前から遮りが消えてなくなり、代わりに見上げた視線の先にはシズちゃんの顔が現われた。わ、と声を出す前に、柔らかな唇が俺の唇を塞ぐ。ねっとり、と舌先が唇を舐めて、なぞるように、咥内に侵入する。傍若無人ではあるが、下手ではない口付けに、いつも流されてしまう。そして、今日も。シズちゃんの罠だって分かってはいるのに、直ぐに夢中になって粘膜を舐め上げる舌に自分の舌を絡めて、ぐちゅぐちゅ、と溢れる唾液を一生懸命に飲み下した。ぷちゅり、と音を立てて離れていく唇を恍惚と見つめながら、はふはふ、と息を吐く。濡れた唇にぞくり、と快感が走り、同時に反応するように、ペニスがぴくぴくと痙攣した。
もぞり、と足を擦り合せる。だが、その動きをシズちゃんは見逃さなかった。下ろされた足を再び掴まれて、両踵が彼の肩に乗せられる。かと思ったらシズちゃんの顔が俺の股の間に埋まるわ、俺のちんこは目の前にあるわ。何これ。緊急事態でしかない。暴れないわけにも行かず、げしり、とシズちゃんの顔を足蹴りする。だが、その足も容易くあの馬鹿力に掴まれて、俺の抵抗も直ぐに終了した。赤い唇からぬるり、と現れた舌がくるり、と俺の尻孔の縁を舐める。皺の一本一本を伸ばすような舌の動きにざわざわと首筋が粟立ち、膜が掛かった瞳から涙が溢れた。俺だって、多分本気で抗おうと思えば出来る。実際に実行した事は無いし、今も出来てないけど。それは、この馬鹿の所為って事にしとこう。(俺がその気になったなんて、死んでも言わない)ぐしぐし、と滲んだ其れを服の裾で拭い、僅かに腫れた目蓋を開けて、蛍光灯の光りが馴染む髪を指先で梳いた。絡まる細い其れは触り心地は良いがまだ闇のように真っ黒い。俺と同じだ、なんて思うと何だか気持ちが良くて、未だに俺の尻の間に埋まる頭を引き寄せた。ん、とシズちゃんの声が唇から漏れ、くちゅり、くちゅり、と舌が挿入される感覚に、きゅ、と後孔が締まる。象るようにはっきりとしたシズちゃんの舌の形や温度。高まる興奮。舌の動き一つ一つに意識を集中して、ほんの少しの快感を見出すまでそう、時間は掛からなかった。目を閉じて、くぽくぽ、と唾液塗れになりながらシズちゃんの舌を受け入れる後孔を想像する。多分だらしなく広がったソコは嬉しそうにシズちゃんを受け入れている事だろう。とは思うが、やはり足りない。こんな刺激では達せない。現に、俺の目の前には勃ち上がったまひくひくと痙攣する自分のペニスが晒されているが、たらたら、と水っぽい先走りが何時までも溢れるだけで、このままでは達せそうにはなかった。
「ん、っぅ、しず、っしずちゃん、っ」
イかせて、とは言わない。けれどシズちゃんは其れを察知したのか俺の足を肩に乗っけたまま、ちゅ、と頬や額、唇に口付けを落とされる。それはもう少し我慢しろ、っていう合図だった。だがもう熱くて我慢なんて出来そうにない。やだやだ、と首を振りながら、シズちゃんの頭を引き寄せると、ぺろりと唇を舐める。そして、はあ、とシズちゃんの唇から漏れる溜息を自分の呼吸と一緒に飲み込んでしまうようにシズちゃんの唇を貪った。直ぐに離れていく唇を追いかけようと黒い髪を掴む。すると、くしゃり、とおっきな手が俺の頭を撫でられ、目を細めた。あやすような指先と、もうちょっとな、と低い声が鼓膜を揺らす。その途端、ぐちゅり、と俺の後孔を解くように、ぬるり、とシズちゃんの指先が入り込んだ。同時に、毛の無くなった剥き出しの皮膚に舌がなぞるように這う。舌の動きと連動する指がくぷくぷ、とナカを抉るように掻き出し、シズちゃんが注ぎ込んだ唾液が、ぐちゅぐちゅと音を立てた。耳までをも犯す水音、気が狂いそうになるほどの細やかな快感。どうにかして欲しいのに、して欲しいとも言えず、気持だけが焦れ、遂には涙まで溢れてくる始末。もう、無理だ。どうにかなりそう。ほんの僅か残った理性の中でそんな事を思うと、正に以心伝心(自分で言うのもくすぐったいけど)と言うものが俺の目の前で起こった。
大丈夫か、と頭上から掛けられる声に目蓋を持ち上げて霞む視界の中にシズちゃんを収める。なでなで、と頬っぺたを擦る指先に擦り寄るように頬を寄せて、シズちゃん、と上がった息と一緒に声を零す。そうすると、シズちゃんは目を細めて少しだけ笑って、今やるから、と告げた。(ついでに、本当に子供みてえだな、なんて事も言われたが、この際水に流してやる)くぽり、と抜き取られた指先の余韻に身震いし、後孔がヒクつくのが分かる。自分で言うのも何だが、俺の唇より、よっぽど正直な穴だ。などと思いながら、冷たく腿を流れる唾液やら体液やらに膝を擦り付けると、シズちゃんは俺の身体をそっと、抱き締めて先端を尻穴に押し付けた。先端部分から、ゆっくり、と入り込み、広がっていく穴がきゅ、とシズちゃんのペニスを締め付ける。より明確に象られたソレに唇を噛みながら、ゆさゆさ、と少しだけ腰を揺らすと、にゅぽ、と先端が全て挿入れられた。息を吐きながら、もっとして、と言葉にする代わりに、ちゅ、ちゅ、と赤い唇に口付け、汗ばんだ首筋を引き寄せる。それから、甘く、甘く、シズちゃんと掠れた声で呼べば、その後どうなるか、俺は知っていた。ぐずり。衝撃と一緒に、泡立った体液が質量の増したシズちゃん自身に押し出されるように、後孔に絡みつく。そして、髪の代わりにキラキラと輝く彼の陰毛が、俺のその部分に擦り付けだけで、俺の意識は完全にぶっ飛んだ。そこら辺から最早記憶は無い。だが、気持ち良かった事は確かだ。多分何時もより興奮してた。その事からも分かるように、俺は結局、こうして、自分の恥部が丸見えになるなんていう最悪な事態を楽しめるような環境を悪くない。そう思っていた。
この後、苦しむことになる股間の痒みを除けばの話だが。






図々しいのね、純潔









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