神の暇潰し2



神道が痛子とBSRに来てから二ヶ月後の話。


二ヶ月間の出来事

・伊達さん家に厄介。
・神様チートで色んな料理を作り、それを痛子が作った事にして出してるため家臣からの株上昇↑↑
・しかし、痛子にとって本命の筆頭は何故か振り向いてくれない。
・逆ハーつければよかった!←今ここ


こんな感じ






『今日もいい天気じゃのう。散歩日和じゃぞ、姫』

「晴れだろうが雨だろうが何だろうがどうでもいいわよそんな事!」

『姫の心中はあいにく嵐のようじゃ』

「人の心の中を天気に例えないで!」

『すまんすまん』

「いいからさっさと襖閉めて」


部屋に入った途端、重いと文句を言いながら打ち掛けを脱ぎ捨て、着物一枚で床にだらしなく座る姿はお世辞にも姫とは言い難い。
しかし、この部屋には姫と偽る女と、その素性を知る者しかいない。一歩外へ出れば一国の姫として振る舞わなければいけないのは、女にとって疲労以外の何者でもなかった。


「何で政宗はあたしを見てくれないの!?」

『さぁ?儂には分からぬ』

「あんた神様なんでしょ!?人の気持ちくらい分かりなさいよ!」


ヒステリック気味に叫ぶも、分からないと繰り返せば呆れたようにため息をつく。
女には伝えていないが、神道は女の言う通り人の気持ちが分かる。だが、それを伝えれば女は好かれようとしてこれまでの態度を一変させるだろう。そして、女が好意を寄せる男は少しずつ女に寄っていき、終いには室に迎えたいという展開が待っているかもしれない。
それでは、つまらない。
神道は退屈を嫌う。
ハッピーエンドよりも、バッドエンドを好む生き物だ。

女が好意を寄せる男とその右目は、女を疑っていた。
この世界へ来て二月。
世界の設定を少し変えるにあたり、女の希望で《徳川家康率いる徳川軍を一人で壊滅させ、なおかつ戦国最強の本田忠勝に勝利した》という記憶をこの世界に植え付けた。
そして、それと同時に《織田軍によって家を滅ぼされた》という記憶も植え付けた。
軍に一人で立ち向かうにしては、女はあまりに非力すぎたのだ。
剣を振るう者の手には少なからずそれ相応の豆があるはずだが、女の手にはそれが一切ない。
加えて、徳川の大軍を一人で撃ち破るのだから、織田の攻撃も防げたはずなのでは?
男とその右目は、いつもそのような事を話し合っていた。
そんな疑惑を向けられているなど知らない女は、彼らの疑問が深まる行動ばかり取っている。
日本刀を持ち上げて「刀ってこんなに重いんだね。こんなに重いのを持って戦う政宗達は凄いよ」などと言った時、神道はフォローよりも笑いを堪えるので精一杯だった。
その場にいた者達は、ならばお前は一体何の武器で徳川に勝利したのだ?と疑問に思っていたようだが、皆あえて口には出していなかった。
こちらへ来る前から様々な矛盾があったが、神道はその矛盾を全て承知の上で世界を変えた。
ハッピーエンドになどさせない。ただ自分が楽しみたい。そのために、女に矛盾している点を伝えなかったのである。


「小十郎だってどこかよそよそしいし、名前で呼んでいいって言ってるのにいつまでも苗字だし…あんた、変な設定にしたんじゃないでしょうね?」

『失礼じゃのう。儂は姫の申した通りにしただけじゃのに』


そう、神道はただ女の言う通りにこの世界を変えただけだ。


「じゃあ何であたしの思い通りにならないのよ!」

『人とはそんなものじゃよ』

「…ムカついたからちょっと買い物行って憂さ晴らししてくる。もっと可愛い着物でも着れば政宗も振り向いてくれるだろうし」

『儂はどうしたらいい?』

「ついて来ないでいいわよ。お金だけ出して」


懐から財布を出せば、それをひったくるように奪い、打ち掛けを羽織らぬまま大股で部屋を出た。
己が望んで付けた最強という特典を忘れているのか、乱暴に開けたせいで襖が外れてしまったが、そんな事などお構い無しのようだ。


『…少しは姫らしくできんのかのう。どう思う、忍の者よ』

「…ちょっと、何で気付いてるわけ?」


屋根裏から出てきたのは、忍ぶには派手すぎる橙の髪の忍だった。
部屋に戻って来た時から彼が屋根裏に潜んでいたのは分かっていたが、あえて触れずにいた。面白ければ何でもありである。


「織田に滅ぼされた国の姫が伊達にいるって聞いてね」

『さすが忍じゃ。主は武田の所の者じゃったか?』

「…へぇ。俺の事知ってるんだ」

『儂はそこいらの軍師より物知りじゃぞ』


冗談っぽく笑うも、男は疑いの目を向けたまま。
そして、顔には出していないが、内心は少し動揺しているようだ。会った事のない女が何故忍である自分を知っているのか?何故この女は自分がいる事が分かったのか?そんな疑問が、頭の中を巡っていた。


『お主の主人に今見聞きした事を伝えたいならば伝えよ。儂は口封じなどというつまらん真似はせぬ』

「…変な奴だね、あんた」

『儂は退屈が嫌いでの。世が面白い方へ進めばそれだけで満足じゃ』

「いいの?俺、今までの会話全部伝えるよ?姫は頭がおかしくてよく分からない言葉ばかりで、その従者もまた然り…って」

『おぉ、面白いではないか!伝えよ伝えよ!』

「…ほんっと、変な奴」


一言そう言い残すと、男は一瞬にして姿を消した。
男のいなくなった部屋で、神道は一人口元を歪めていた。


『ああ…面白いのう…』


喉を鳴らしながら笑えば、独り言のように呟いて開けっ放しになっている襖から空を見上げた。
空はまるで、神道の心を写したかのように快晴だった。





無駄に長くなった。
そしてわたしはさすけがすきだ。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -