「私の名は照星という」
火縄使い特有の、煙で燻された声は余計に妖しさを際立たせていた。耳から入った照星様の声がわたしの心臓を鷲掴みにするのではないかと思うほどに。
「存じ上げております。わたくしは笠原清香と申します」
「私が恐いか?」
「いえ、そのようなことは……」
全て見透かされてしまいそうな目だった。抱きしめられながら見上げた顔は村中ですがった仏の偶像に似ていた。神秘的な頬笑みと、邪神のような目の輝き。
「残念だが、こんな事までしなくていいなどと慈悲を垂れるつもりはない」
わたしの首筋から胸元へと襦袢の中に手を滑らせつつ囁いた。
「戴くものは戴いておかないとね。やってられないのだよ」
妖しい頬笑みを口元に含ませたまま、わたしの襦袢を肌蹴させる。照星様の膝の上で胸を吸われ、裾から入ってきた手は膝を撫でた。
「男は知っているのか?」
「いえ。村の長が清い体をと……初めての女はお嫌いでしょうか……」
「そんな事はない。ただ、あまりに綺麗な体を汚してしまうのが惜しいと思ってね」
「そんな……照星様に捧げられるなら、わたくしは幸せでございます」
「嘘おっしゃい。本当なら好いた男に触れられたいはずだよ」
「照星様はわたくしどもにとっては神様です。神に抱いていただける事はとても名誉な事にございます」
全部自分に言い聞かせてきた言葉だった。本当は照星様のおっしゃるように恋をして、溺れるように経験したかった。こんな風に村全体から背中を押されて、さぁ抱かれてきなさいと流されるのは嫌だと感じていた。
「清香と言ったね。気丈な子だ」
「照星様……」
優しく口付けられて、初めての感覚にめまいがした。匂い立つ色気に圧倒されて、目の前がクラクラする。ただ、唇を重ね、舌を吸われただけで、わたしの体は力が入らず、ふわふわと実体がなくなってしまったのではと思うほどに。
口付けだけでこんなに良くなっているのに、さらには胸を弄られる。先端の部分を指でこねられ、尖った所を乳房の中に押し込めるように刺激され、あまりの快感に息がつまった。
「はぁ、あ……くっ……」
「本当に初めてなんだな。好い反応だ」
「あっ、わ、わたくし……照星さまに……ご奉仕、するようにと……」
このままじゃ、できなくなってしまう。気持ちよさに飲み込まれて、体のどの部分も動かせなくなってしまう気がした。
「今はただ感じていればいい。ほら、上手に呼吸もできていない」
指がわたしの帯を解く。人に着物を脱がされるなんて、初めてだ。自分の手を動かしていないのにどんどんあらわになっていく体にとても違和感を与えられた。
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