「きゃーーーーーあああああああぁぁっ!」
タソガレドキ城にこだまするあたしの悲鳴。もうみんな慣れっこで誰も助けに来てはくれない。冷たい人達っ!
「こーーーーさかさーーーーんっ!!助けてーーーーー!」
名前を呼んでやっと助けに来てくれる、ツリ目の高坂陣内左衛門さんは呆れ顔。
「またですか。組頭、昼間っから所構わず乳繰り合うのはやめて下さい」
「いいじゃないの。ほら小夜も喜んでるし」
「喜んでませんっ!精一杯抵抗してますっ!」
着物というのはどうしてこうも肌蹴やすいのか。しっかり着付けたつもりでも、襟を掴まれて男の人の力で左右に引っ張られたらもう丸見え。
押し倒されて鷲掴みにされて。
この城いちばんの曲者はこの人だ。
「高坂さぁん」
「組頭ってば」
「いいよねぇ。くのいちじゃない女の子は簡単で」
「組頭、会議がありますから」
高坂さんが無理矢理あたしの胸から雑渡さんを引き離してくれた。襟の後ろを掴まれてズルズルと引きずられて行きながら、どこで覚えたのか投げキッスをしてきた。
それをあっかんべーで返して乱れた着物を着直し、女中の仕事に戻った。ここの女中さんがみんなオバチャンなのはこういうわけだったのか。
ほんと、突然ヌッと現れて襲いかかってくる、心臓に悪いエロオヤジ。
また、次の日も。
「こーーーさかさぁーーん!」
「あーーーもーーーー!組頭っ!城の風紀が乱れます!」
「陣左、お前も触る?」
「ぎゃーーーーーーっ!!」
後ろから羽交い締めにして高坂さんの目の前にあたしの胸を晒す。なんとか腕をほどこうと体を揺するたびに胸が揺れて、余計に恥ずかしい姿になった。
「見ないでーーーー!」
「み、み、見てないっ!」
「参加しないなら邪魔だから、シッシッ」
高坂さんに犬が猫でも追い払うような仕草を見せる。
「上司命令だよ。今日こそはゆっくり……ね」
「ね、じゃないです!それに、あたしの上司じゃないです!忍者じゃないもん。高坂さんっ、部下ならこの人なんとかして下さい!」
「もう私は知らんっ!何回かヤラせたらそのうち組頭も飽きるから」
頑張れよ、とあたしの肩を叩いてサッと消えてしまった。唯一の救いだったのに、見捨てられたのだった。
「そんなぁ……」
高坂さんにまで見放されて、雑渡さんと二人になっちゃった。
背中に黒いハートの背景せおって、目を光らせて。
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