「小夜はおもしろいねぇ」
「雑渡さんは、こんな事して楽しいかもしれないけれど……」
片手で胸を触りながらあたしを壁へと詰め寄ってくる。雑渡さんは背が高くて、背中にも目の前にも壁があるみたいだ。
「あ……、あん、もう……雑渡さんっ」
「気持ちいい?」
「いや……っ」
食べる時ですら隠したままの口元を見せて舌を出すと、あたしの乳首を舐めた。
電気が走るような快感につい、甘ったるい声が漏れてしまう。
「あっ、あっ、あん……っ」
「ん……かわいいかわいい」
指先で反対の乳首を弄ばれて、立っているのが億劫になってきた。この場に寝転がって、気持ちいいのに集中したくなってきちゃう……
「あ……んっ、だめ……」
最後のひとかけらの抵抗を見せて、目を閉じた。
雑渡さんの腕につかまって、背中の壁をつたってずりずりと座り込む。雑渡さんは「おやおや」と腰に力の入らないあたしを支えながら一緒にしゃがんでその場に寝転ぶのを手伝ってくれた。
「そんなに気持ちいいの?えっちだねぇ」
「うう……んっ、いやぁ……」
指で摘まんでひねるように弄ぶ。ビクビクと反応するあたしを楽しげに見つめて不敵に笑った。
「んっ……はぁっ、ヤダ、あん……っ」
それにしても、なんでこんなに気持ちいいんだろう。雑渡さん、上手……
「小夜は左のおっぱいが感じやすいね」
「雑渡さんの……変態っ、バカ、エロオヤジ!」
チュウっと吸われた左の乳首。体の奥からどんどん気持ちよくなってきて、たくさん喘ぎながら首を横に振った。
「あんっ……ん、やぁ……っ、あっ、あっ、あんっ!」
逃げ出してしまいたいような、それでいて、与えられる快感を追いかけるように集中していくあたしの頭の中。
目を閉じて快楽に没頭するあたしの変化に気付いたのか、ふふ、と雑渡さんの笑う声がした。
「お前、おっぱいだけでイキそうになってないか?」
「や……嘘……っ、そんな事、あるわけ……な……いっ」
ないと言いながらも腰が揺れる。自分でももしかしたら、っていう予感がしていて、乳首をこねられながらだんだんと悲鳴に近い声になってきた。
今まで感じた事のない快楽の波に身を任せてみたい。胸だけでイッちゃうような事があるなら、経験してみたい。
あたしは感じる事のみに集中する為、閉じていた目をさらに強くつぶり、頂点目指して雑渡さんの愛撫に没頭した。
「そうそう。素直にね」
「あんん……っ、ふぁ……、あっ、あっ、ああんっ」
柔らかくした舌で優しく舐めていたかと思うと、きゅっと変形するほど強くつままれたりと強弱をつけて責めてくる。唇ではさんだり、歯を当ててみたり、あたしの乳首と雑渡さんの体のどの硬さが一番合うのか実験でもしてるんじゃないかってくらい、ねちっこい。
ぐりぐりと指の腹で押しつぶされたり、爪で弾かれたり。
強くいじめたかと思うと触れるか触れないかの焦れ焦れとした触れ方に甘く苦しめられた。
「もっとぉ……強く、」
自分でもびっくりするくらい蕩けた声が出た。胸の先は軽く噛まれて強い快感に雷が、目の裏に見えた。
「ああっ!はぁ……んっ!い、い……くぅ、いっちゃう……っ、あ、あ、あ、あぁ……っ!」
びくびくと自分の体がはねるのもお構いなしに、絶頂の余韻を楽しんだ。力を抜いた目元から涙が落ちる。
あたし、本当に胸だけでいっちゃったよ……
信じられないけど、こんな事ってあるんだ。
雑渡さんの指が涙をぬぐってくれた。
どうだと言わんばかりのしたり顔であたしを見て、まさに「ざっとこんなもん」だと言いたげだ。むかつく。
だけど、そこじゃなくて、下を触って欲しいと思った。まだ触れられていない入口だけど、すっかり潤って柔らかくなってると思う。
体の中に入ってきて……もっと、もっと、気持ちよくして……
あたしの指は雑渡さんを求めて、まっすぐと天井へ伸ばしていた。
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