「あったよ」
頭にのせたれんげ。照星さんは新しいのを長く長く編んでいる。
「ほら、少しコツが掴めてきた」
「本当だ。でもあたしはこれがいい。照星さんが初めて作った花かんむりだもの」
「じゃあこっちは首に」
「ふふっ、くすぐったぁい」
じゃれあって、キスをして、少しお昼寝をして。
とっても楽しいデートだった。
「今度はうどんを食べに行こう。行きたい店があるんだ」
「うん!楽しみ」
偶然なのか趣味が似ているのか、そのうどん屋さんも雑渡さんとよく行ったお店だった。
それだけじゃない。最近二人で出掛ける場所はどれも雑渡さんと行っていた所ばかりだ。あんみつ屋さんもおだんご屋さんもカメのいる川原も小さなカニのいる沢も野苺が採れる山道も……
楽しい事は楽しいのだけれど、偶然にしては重なり過ぎだ。
そして極めつけは、宿。
ここも雑渡さんと何度も来て、何度も抱かれた場所……さすがにここは抵抗がある。
「照星さん……ここじゃなくて、あっちにしません?」
「どうして?あっちは前に行った事があるし」
「でも……」
元カレの事、思い出しちゃうから。なんて言えない。
「今日はそういう気分じゃない?」
「そうじゃないんですけど……」
「じゃ、いいね」
って結局そこに入る事になってしまった。久しぶりのこの宿。
小さめだけどきれいで内装も好みだ。お花が活けてあってかわいいこけしが飾ってある。
雑渡さんは「見ちゃダメだよ」とこけしを後ろ向きに並べ替えていたっけ。
ピンク色のおふとんはちょっと恥ずかしくなっちゃうのだけど、雑渡さんはそれもお気に入りだった。
「小夜ちゃん」
「照星さん、大好き」
おふとんの中でいちゃいちゃとキスしたり頬をなでたり。いつもは怖いくらい完璧な照星さんだけど、こんな時は普通の男の人だ。
「私も好きだよ」
腰からお尻のほうに手が下がって、そのまま太ももを撫でる。
着物の裾をゆっくり捲りあげながら、首筋に舌を這わせてくる。
ドキドキと心音が速くなって期待に体が熱くなってきた。
襟の中に大きくて温かいてが入ってきて乳房をまさぐりながら肌蹴けさせていく。
うっとりと目を閉じて、照星さんの髪を撫でて、彼に身をまかせた。
はじめは恥ずかしかったけれど、最近はこうして肌を重ねる事にも少し慣れてきた。
少し汗ばんだ肌がぴったり吸いついてくるのも好き。照星さんの肌はキメが細かくて、白くて気持ちがいいから。
繊細な肌に似て照星さんの触れ方もとっても丁寧で優しい。
なのに、今日はなんだか……怖い。
胸を触る力が強くて、噛み付くみたいに乳首に吸い付く。
雰囲気もなんだか怖くて、そうなると、急に体が強張ってしまった。
「照星さん……っ、少し、痛い……です」
ハッと体を離す照星さん。眉間にシワを寄せて、なんだか辛そうに見える。
「悪い……やっぱり、ダメだ……」
急に背中を向けた。大きな背中がなんだか淋しそうに見える。
「どうしたんですか……?」
背中を向けたまま、何も答えてはくれなかった。
あたし、何かいけない事をしてしまったんだろうか。それとも何もしてあげないから、つまらなくなって……勃たないとか。
そういえば春画で見た事がある。男の人のを口に入れるの。
舐めてあげたら喜ぶんだって友達が言っていた。
ああいうのしてあげたら、照星さんも気持ちいいのかな。
「照星さん……あの、口で……」
言いながら彼の下半身へと体をすり寄せた。紐を解いて、袴に手をかける。
「そんな事、しなくていいよ」
「でも……あたし、他にこういうの知らないから」
男の人がどうやったら気持ちよくなるかなんて、考えた事なかったもの。
もしかしたらあたしばかり感じていて、照星さんにとってはつまらないセックスだったのかも。
ごめんなさい。そんな気持ちを込めて恐る恐る口の中に入れてみた。
変な感触。柔らかさはういろうか何かに似ているけど、甘くないし変な感じだ。
「んんっ……」
一生懸命舐めてみても、照星さんのは大きくなってくれなくて、段々と惨めな気持ちになってきた。
やっぱり下手なのかな……あたしじゃつまらないのかな……
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