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先生が連れてきてくれたお店は和テイストのオシャレ居酒屋。薄暗い店内に小さな川が作ってあって狐のオブジェが飾ってある。

夜の神社のようなイメージでワクワクさせてくれた。
お化け屋敷みたいに怖いけど好奇心を刺激されるしつらいに、あたしと先生の距離は自然と縮まる。

案内されたお座敷の一角に横並びに座ると、テーブルの上にも小さな狐がいて指先で頭を撫でてみた。


「ここのカクテルが面白いんですよ。もう飲める歳でしょう?」

「はい。わぁ!すごい種類……迷っちゃう」

「私は烏龍茶で」

「飲まないんですか?」

「車なので」

「そっか……飲めないですよね」

「それとも飲んだら朝まで付き合ってくれますか?」

「バカ」


ふふっと笑い合ったとたん、何だか昔と同じような感覚になれた。

廊下で、校舎で、音楽準備室でこっそりキスしたあの日々。

ドキドキして浮かれて、楽しかったな……


少しお酒も手伝って「なんでフッたの?」って聞いた。ずっと気になっていたから。


「私の事、ちゃんと見てくれてなかったじゃないですか。ちょっと学校の先生と遊んでみたかった……そんな感じでした。他にも彼氏がいたみたいだしね」

「バレてたんですか……」

「気付かない方がおかしいよ。今でもちゃんと恋愛してないようですね。モテるくせに恋愛下手」


カチンときた。
先生の言葉にはいつもトゲが生えてる。

本当の恋愛なんてどうせ知らないんだろう、みたいな見下した言い方。


「先生こそ本当は彼女とうまくいってないんでしょ?だからあたしを誘ったんじゃないんですか?」

「……相変わらず、生意気」


そう言うとあたしの後頭部を掴んで唇を奪われた。
純情ぶるつもりはないけど、こっちはそんな事するつもりなかったから「奪われた」で合ってる。


店内が薄暗いとは言え、人前で。

唇を離すと、じっと見つめてきて……きっとゆっくり3数えるくらいの短い時間なんだろうけど長く感じた。

また、キスする。

頭を押さえていた手が、今度は耳へ。あたしがもう抵抗しないってわかってそうするんだ。

唇が離れて、視線を絡めてきて、反対に顔を傾けた先生の顔が近付く。
先生の濡れた唇が触れるともう離れないで欲しいと思ってしまった。

思い出した。キスが上手だって事。



「人が、見てる……」

「うん。小夜はそんなの慣れっこでしょう?」


アルコールと極上のキスと少しのトゲ。

だめだ。クラクラする……









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