気がつくともう朝で、あたしは男の腕の中で寝ていた。
ずっと……抱きしめてくれていたんだ……
「ねぇ……」
「ん……、あ……」
大きく見開いた目のまま飛び起きて、正座をすると額を床にぶつける勢いで頭を下げた。
「すまなかった!!本当に、どうお詫びしていいか……!」
ゴンと音がしたからやっぱりぶつかったんだ。この人が包帯だらけなのはドンくさいからなのかも。きょとんとしてると彼は続けた。
「私はタソガレドキ城忍び組頭、雑渡昆奈門と言う……えっと……水瓶座のO型で36歳で……」
「いきなり女を襲う人なのね?」
「面目ない……」
あまりにも昨日と違う人だから可笑しくなってちょっとからかってみようと思った。
「あたし、生娘だったのに」
くすんくすんと泣きまねをすると益々青ざめて。
もう謝罪の言葉すら失ったようだった。
「モナカが食べたい……まんぷく堂の福寄せ最中が食べたいな……くすん」
「わかった。それ買ってくるから待ってろ」
ヒュンと風を切る音がして、ちょっとかっこよかった。
寝てる間に逃げればよかったのに。自分も眠ってあたしの前から消えるタイミングを逃しちゃうなんてやっぱりドンくさい。
わざわざ出ていく口実を用意してあげるなんて、あたしもお人好しだな。
雑渡さんとか言ったっけ。夕べはきっと月が惑わしたんだ。悪い人には見えなかった。
犬に噛まれたと思って忘れてしまおう……
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