はさむ=幸せ?(中) | ナノ
#はさむ=幸せ?(中)


雉明零は、草凪晃輝との待ち合わせ場所を探して、街を歩き回っていた。

『リグ・マサラヴェーダって名前のカレー店なんだ。』

晃輝が描いた地図を見ながら探しているのだが、あまりにも簡略化されているこの地図で、土地勘のないものが店までたどり着くのは難しいだろう。
大雑把に広い道路が書いてあって、さらに目印となる信号、神社、學園がぽつりぽつりと描かれてあり、【この辺】と丸で囲まれた場所にカレー店があるらしいのだが…。
入りくんだ細い小道に間違って入っていったり、行き止まりだったり…。
歩くよりは、やはり高いところから探した方が早いのかもしれない。
木にのぼって辺りを見回し、それらしき店を探してみるが、カレー店とはどのようなものなのか、さっぱりわからない。
自力でたどり着けそうもないので、一度學園に向かい、晃輝と一緒にカレー店に向かった方がいいのかもしれない。
そう思った雉明は、木の枝に腰を掛けて、晃輝に連絡をしようと携帯電話を手にした。その時、

「雉明クン?」

馴染みのある溌剌とした声が、彼を呼んだ。
声のするほうを見ると、不思議そうに自分を見上げる顔馴染みの少女の姿に、雉明は嬉しそうに目を細めた。

「…武藤か、元気そうだな。」

雉明の優しい笑顔に、武藤いちるも元気いっぱいの笑顔で返す。

「うん、雉明クンも!ところで、木の上にのぼって…もしかして探し物?」

武藤の問いに、雉明はこくりと頷いた。

「…カレー屋。」

「へっ?」

「カレー屋を、探しているんだ。」


***


すごい土煙をあげて、全力疾走した二人の少年は、ゼェゼェと呼吸を整えながらカレー屋の前に立っていた。

「今日は…俺の負けか…。」

晃輝は肩で息をして、頬を伝う汗を制服の袖でぬぐい、悔しそうに言った。

「ヘヘッ…体育では負け続きだったからな…ここで勝っておかないと…。それにしても、なかなか良い勝負だったよなッ!」

壇燈治も肩で呼吸をしながら、頭から吹き出る汗を袖でぬぐうと、満足げに笑って言った。

「そうだな。次は負けない!」

「へッ、言うじゃねェか。俺だって、負けるつもりはねェよ!」

にやりと、お互いの顔を見合わせて笑った。

「…ところで、零はまだ着いていないみたいだな。」

店の前で待ち合わせと伝えたのだが、見当たらないので、先に店に入ったのかと思い、晃輝はガラス越しに店内を覗いてみた。
しかし、雉明の姿は見当たらない。
心配になって、二人で外をぐるりと見回していると、

「あッ、雉明クン、晃輝と壇クンがいるよ!」

お〜い!と、元気よく手を振る武藤の横で、あれがカレー屋なのかと関心している雉明の姿が見えた。

「遅くなってしまって、すまない。道に迷っていたところを、武藤に案内してもらった。」

申し訳なさそうにする雉明に、こっちも今着いたところだから…と、晃輝が告げると、壇も横で頷いた。

「そうそう、気にすんなって!そういや、武藤は昼飯食ったのか?」

「えッ?あたしはまだだけど…。」

それならば、武藤も一緒にカレーを食べようということになり、みんなで店に入ると、四人掛けのテーブルについた。
まわりを物珍しげに見ながら、店内に漂う香辛料の香りに、不思議な香りだな…と、雉明は思った。

「スワガト・ヘー!!魅惑のカレー桃源郷へヨーコソゥ!!」

今日も変なテンションでお客を歓迎するカルパタルが、お冷やをのせたお盆を片手に、注文をとりに晃輝達のテーブルにやって来た。

「俺、今日のお勧め大盛りで。」

「あたしも、同じく大盛りで。」

「俺は、お勧めできないのをてんこ盛りで!」

相変わらず《お勧めできないカレー》を注文する晃輝に、壇は苦笑いした。

「お前、挑戦者だな。」

「やっぱり、どう《お勧めできない》のか、知りたくなるのが人間のサガってやつだろ。」

「あはは、確かに気にはなるけど…。ね、雉明クンは何にする?」

武藤に何を注文するのかと聞かれて、雉明は少し考えてから言った。

「…おれは、晃輝と同じものにする。」

ブーーーッ!!!

それを聞くなり、壇は飲みかけの水を口から吹き出した。

「うわッ、燈治、どうした!」

「だ、大丈夫?壇クン。」

「壇、具合でも悪いのか?」

各々が心配そうに壇を見ると、苦しそうに咳き込みながら、壇は言った。

「ケホッ…雉明…、悪いことは言わねェ、…それだけは…やめておけ…。」

「そうなのか?」

キョトンとする雉明に、

「そ、そうだね、うん。雉明クン、あたしたちと同じお勧めにしようよ!普通においしいのを食べた方がいいよ!!」

武藤は、一生懸命お勧めのカレーを勧めた。

「そうだ、武藤の言うように、カレー初心者は普通のにしておけ!…ま、上級者でもアレに挑戦したいとは思わないがな…。」

「何だよ二人とも、まるで俺が普通じゃない、まずい物を食っているような言い方しやがって…。」

ちぇッと拗ねる晃輝の横で、カルパタルはうんうんと頷いた。

「二人の言う通りね。この字は普通じゃないね!」

「作ってる本人に言われたかねェーーーッ!!!」

何だかんだで、結局、雉明も壇たちと同じお勧めのカレーを注文することにした。






またまた長くてスミマセン。
へ続きます。
2010年5月16日 風の字

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