何でか怪異に巻き込まれる凸凹コンビのお話


鳶「えっ……どういう、ことっスか?それ……」
小「わからない。ただあの子が、人間が入れそうな部分は全て今見たけれど……」
目を伏せた小南にオビトが口を噤む。
誰がどこで見ているかわからない状況で例え偽マダラであるとはいえ、こちらの手のひらを明かすのは避けたい。
鳶「……とりあえず來を探しましょう。この屋敷に何かあることは間違いなさそうッスから」
だがそれでもできることは確実にある。
仮面の奥でそっと紅い眼を妖しく揺らめかせてチャクラを見る。
小「でもどうやって?」
鳶「あの子、なんだかんだでちゃんとオレが行くまでは持ち堪えるぐらいの強かさはありますし……オレが辿り着けるようにヒント残したりぐらいはしてくれてるかもしれないッス」
小「……でもあなたでもいつのまに居なくなってるのかわからなかったのよね?その状態でヒント残したりできるのかしら……」
鳶「でもでもだってばっかりッスねえ?いい歳した大人同士、もうちょっと建設的なお話しません?」
小「普段あんだけふざけてるアンタにだけは言われたくないわ」
ごもっともである。
なんせこの後輩(実は違うが)、へんてこなお面つけてすっちゃかとへんてこな動きをして可愛い可愛い後輩(こっちは本物)とへんてこなことばっかりして暁メンバーを呆れさせ、笑わせてくれるのである。
トビと小南は一旦二階の階段を上がった右端の部屋からしらみ潰しと言わんばかりに見て回った。
使用人用と思われる小部屋が幾つかある中で忘れたように机の引き立しにあった手記を見つける。
《旦那様の女好きには困ったものだ。今日も来たばかりの新人を口説いていた。被害を免れているのはマリーぐらいなものだろう。ご主人様のお気に入りだけあって、さすがのルイズ様も手が出せないようだ。あの子は本当に使用人にしておくには勿体無い良い子だ》
鳶「んー……?これ、メイド長の日記ッスかね?」
小「文章から受ける印象としては、そうね」
小南が日記を読むのを後ろからトビが覗き込む。その距離は來の時ほど近くはない。
《ご主人様が亡くなった。
街中の、特に人気のない路地で亡くなっていたらしく、身につけていた物も取られ発見するのも、身元を判別するのにも時間がかかったのだという。
マリーは玄関先でここ三、四日待っていた。
ご主人様のご遺体が到着されるとマリーがその場で泣き崩れていたのが何とも痛ましかった。
でもわたしはメイド長。泣きじゃくるマリーを旦那様と一緒に慰めた。》
《マリーはまだ塞ぎ込んでいる。
それもそうだろう。あれだけ仲が良かったご主人様だ。しかし何故ご主人様は外にお出かけなさったのだろう?誰も見ていないと言っていたし……》
《ご主人様は誰かに殺されたのではないか、と噂している者がいるようだ。検死によれば衣服が剥ぎ取られてはいたが暴行の跡も、抵抗したような跡もないらしい。
そういえばここのところ少し朝が遅かった。
……たしかに、ご主人様はお体があまり強い方ではなかったと記憶している。この地域は雨が降っていることの方が多い。もし、もしもだが、雨に濡れ続けていたのなら、ご主人様の体調は……》
《ご主人様が亡くなってから少し経った。
だいぶ皆、元の働きに近くなった。悼む気持ちはそのままに、ご主人様はお出かけ先で発作を起こされて亡くなった、ということも知られて妙な噂を立てる者もいなくなった。
マリーはたまに思い耽っていることがあるが少しずつ戻ってきている気がする。喜ばしいことだ。》
《……ようやく、マリーも前と同じような笑顔が戻ってきた。これでわたしも一安心というものだ。
そういえば最近、ルイズ様とマリーはよく一緒にいるのを目撃することが増えた。
あれだけ落ち込んでいたマリーをつきっきりで慰めていたのだ。旦那様の女好きも今回ばかりは役に立ったようなので目を瞑ることにしてあげましょうかね》
《またマリーがお客様から嫌がらせを受けた。
ルイズ様があしらっていたがあのご令嬢の目。
憎悪に塗れていた。ゾッとする目で二人を見ていた。
嫌な予感がする。このまま、何もないといいのだが……》
その後は白紙が続いていた。どうやら終わりのようだ。
小「……ルイズ様、ね」
鳶「まあご主人様やら旦那様やら出てきてる以上重要人物ではありますよね。で、どんな人なんスか?」
小「ルイズ・ハイドレンジア。ミラちゃんから数えて二代前のハイドレンジア家の当主ね。つまりはお祖父様」
鳶「……でも、この書き方だとルイズ様ともう一人いません?んーっと、多分ルイズ様っていうのは女好きな“旦那様”と一緒でしょ?だからマリーさんをお気に入りにしている“ご主人様”とは別人」
小「……そうよね?おかしいわ、二代前の当主がルイズという名前であったことは覚えていたのだけれど……三代前のたしかウジェーヌだったかしら。そんな名前の当主はいたけどルイズの父親よ。……まあ確かに、それなら辻褄は合うけど」
鳶「上にお兄さんが居たとかじゃないンスか?ほら、その時代ならもしかしたら家系図から消されたりとかあり得るかもじゃないッスか」
たしかに、まだ医療も進歩していなければ大戦などに巻き込まれていたことも考えれば現存する資料だけではわからない当時の姿もあるだろう。
小「……まあ、貴重な資料であることに変わりはない。わたしが預かっておくわ」
鳶「てか最後のページが不穏すぎやしませんか」
うげー、と言いながらトビが考え込む。
鳶「……小南先輩、どう思います?オレすっげえいやーな考えしか思い浮かばねえンスけど」
小「わたしも似たようなものよ。むしろこれ読んだ後に良い想像できると思うの」
鳶「思えないッスねえ」
小「でしょうね」
ため息をついて手元の日記を撫でる。
小「……あの黒髪の……写真に写っていた女性は、ドレスを着ていたわ」
鳶「うんうん。……あれ、そういえばあの封筒、來が持ったままでしたっけ」
小「たしか、そうね。現物はここにないけど……わたしの仮説では、日記で旦那様と言われるルイズにはご主人様=兄がいた。それで兄の死後、ルイズはマリーと親しくなったのね。……でもルイズが昔引っ掛けたか何かしたご令嬢は心良く思わなかった」
確かに、使用人ッスもんね、と相槌を打つトビに頷いて小南は考え続ける。
小「嫌がらせをしてしまったご令嬢がもし写真の女性なら納得が行くわ。ルイズのことも、マリーのことも、気に入らない。だから恨んだのかも」
鳶「あり得そうー……やだー、三角関係の泥沼展開じゃないッスか!サソリ先輩好きそう」
小「昼ドラよく見てるもんね……」
「不倫を高みの見物できるとかならそれはただの娯楽でしかねえな」と清々しく啖呵を切ったサソリが目に浮かぶ。二人はやれやれと首を横に振った。
鳶「……とりあえず早いとこ來さん見つけましょ」
小「ええ」



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