気がつくと、そこに女性はいなかった。


えっと……杖を封印する……
そうすれば、元の場所に帰れる……
さっきの話ではっきり分かったのはこれだけ。
って言っても、どこに行けばも何をすればいいのかもわかんない。

また辺りを見回すと、すこし離れたところに灯りがあるのが見えた。
生活の雰囲気がある。
そこに向かって道なりに歩き始めた。

これから何が起こるんだろう。
どうなるんなろう。
そんな不安やほのかな期待とは別に、何か違和感を覚える。
……この世界に来た時の違和感。
違和感がない違和感。
あるべき違和感がほとんどなかった。
この短時間で一気に慣れたというか。


そんなことを考えながら歩いていると、度々化け物が現れた。
暗くてこっちには気づかないみたいだから、見つかる前に隠れながら道を歩く。

化け物がいる。隠れなきゃ。
会ったこともない状況に疑問なく対応することに、また違和感を覚えた。
そんな自分にまた違和感を覚える。
わけがわからない。
当たり前のことを疑い出したらきりがない、という言葉がしっくりきた。
自分も知らないうちにこの世界に順応している。
不思議な感覚。
さっきの光に包まれた時の。

きっとこの違和感がない違和感というのはあの光のおかげなんだろう。


そうして歩いていると、さっきの灯りがもう目の前にあった。


“港町ポルトリンク”

その町に足を踏み入れた。

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