【451-460】

惜しみなく零れる温かな紅雪とは裏腹に冷えていく骸躯

灼け付く咽喉が欲した

俺の中で生きろ、それで十分だ(俺以外の誰かの為に息をする事は許さない)

慢心により墜落死した哀れなベレロフォン

貴方はその何も無い場所で何を見付けたの?

貴なる影に耽びつ

鳥籠を食い破ってカナリアは大空へ舞って行った

汚らしい手で触れないで頂けますか(不快極まりないので)

さあ、どうやら御迎えがいらっしゃった様で御座いますよ

蕾のまま散って逝き給ふ君に挽歌を奉る


【461-470】

私は貴方の想いを断ち切る為だけに獣となり牙を剥くのです

最早、俺達の間に正しい恋情なんて存在しない

愛では腹が膨れはせぬ(胸が一杯でも腹は空いているに決まっている)

君の声を殺めたのは正確には僕ではない、僕の中のもう一人の僕だ

どうぞ、御気に召しますままに

蹴散らせ定義

貴方は太陽の様な人だから、私は触れる事が出来ないのです

君の瞳から零れ落ちる雫はどんな宝石よりも美しい

嘲笑でも何でも良いから、(笑って見せてよ、ねえ)

サロメの狂気染みた孝行


【471-480】

見習い魔導士が忘れた呪文

ヒーローになり損なった村人Aの苦悩(俺の何が間違っていたと言うんだ?)

世界は救えたとしても君一人を救えなかった僕には英雄と称えられる資格は無い

勇者が魔王に一目惚れ(この物語の結末は幸福だろうか、)

二度とこの手を離しはしないと誓った、筈だった

夢想の累乗方程式

騎士にはなれども王にはなれぬ(それは生来の運命故に)

怪物に囚われた王女を救い出したのは、これまた怪物の王子で御座いました

掟破りの問題児ヒロイン

荒れ果てた大地に船を置き去りにした朔の夜


【481-490】

どうか、真白の中に葬って下さい(それより他は何も望みません)

濡れたエメラルドブルーに忠誠の接吻を

殺したい殺されたい相思相愛

運命だとか宿命だとか、そんなものはどうでも良かった(結局抗い切れなかったけれど)

嗚呼、まるで甘くもほろ苦いカラメルに溶かされているみたい、ね

対岸のローレルを羨む愚者はいずれ溺れ死ぬらしい

あの光り輝く翼はもう死んだ(後に残されたのは黒い絶望だけであった)

彼の微笑はあの人のものとよく似ていて、

うちゅうのちりひとつ

果てしなく広がる天の前では、何もかもの事象を小さく感じてしまうのも当然だろうよ


【491-500】

ごっこ遊びはもう飽きた

極限まで高められたメタフィジックスは思想と言うよりは妄想に近い

蝋で塗り固めた果敢無い希望(陽の当たる場所には出せないからと、ずっと閉じ込めておいたんだ)

侵蝕する、赫

ごめんね、全部嘘だよ(そう云った彼は、何時もの様にとても穏やかに微笑っていた)

所詮誰もが井の中の何とやら

お前一人失くした所でこの世界は微塵も困りやしない、だから、(早く世界なんて棄てて、俺だけのものになれ)

殺傷と愛玩は類義語である

彼女の為ならば、デコイのまま一生を終えても構わないとさえ思った

何時しか消失してしまったリビドー



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