やさしき日々
Don't worry!Be happy with us!



見づらい方はふち無しver

おいでませ戦国武将




小さな惑星の、小さな島の、小さな町にある、小さな家の、小さなリビングルームに、4人の人間の姿があった。

「それでは手を合わせて」

「いただきまーす!」

部屋を陣取るように敷かれたこたつに、それを囲み座る人間。彼らの視線の先にははぐつぐつと音を立てる鍋があった。

「おい姉ちゃん!肉全部取るとかなしだろ!」
「いつそんなことが決まったのー?早い者勝ちこそ当家家訓!」
「あり得ね!この成長期の弟君に半分分けろ」
「仕方ないなー」
「見るからそれ肉団子!豚!」
「ほらもー喧嘩しないの、お母さんのあげるから」
「サンキューさすが母さん!ってこれ肉団子じゃんかァア!」
「本当仕方のない親子だね。ほらパパの分」
「親父まで乗んなァア!」

と、その時。

ドッガラガシャーン!

二階からひどい音が響いた。

停止する4人。

「…え、ちょ、何今の音」
「…ね、姉ちゃんの部屋じゃね?」
「どどどどろぼう?」
「パパ、今こそあなたの出番よ!」

「え、無理無理無理!パパメタボだもん筋肉とか皆無だし無理無理!筋肉面的に我が息子よ、ゴー!」

「いやいやいや!そーんな言うほどないです親父と変わらないっす泥棒と戦っても一秒でちびるっす!ってことで母さん、頼む!」

「お箸より重たいものは持てませんー!か弱いママに行かせるなんてそれでも息子なのっ!ということで、お姉ちゃん。あなたしかいないわ!」

「えぇええ!あたし!?あたし!?」

「そうだよ姉ちゃんの部屋、いこーる責任は全て君にあるっ!」

その時またガッシャーン!と破壊音が響いて、4人は肩をびくりとさせた。


戦国武将

姉を先頭に、4人はそうっと階段を上がってゆき、部屋の前。ごくりと唾を飲む。一応ダスキンのモップをぎゅっと握りしめ、321でドアを開けた。

「ウォオオオ!」

部屋に突撃すると、人影が視界に霞めた。思い切りモップを振り上げる。

「堪忍しなさい泥棒っ!」

ガンッ!と鈍い音が月夜に響いた。


「姉ちゃんやっつけた!?」


「泥棒さんうちに入ったのが間違いよー!取る物なんて何もないんだから」

「母さん淋しいこと言わないでくれるか。パパこれでも頑張ってるんだから」

照明が付けられ、部屋に明かりが灯る。そこにうつ伏せに倒れているのは、茶髪の青年だった。

「…姉ちゃんの彼氏?」
「いねぇよ、んなもん」
「ちょっとー!できたんならママにいいなさいよー!」

「さてはパパに内緒で連れ込んでたんだな!?そうだろう!お父さんなどと呼ぶな娘は渡さんぞ的展開を予想したんだろう!このこのー!照れちゃってもー!」

「…違うっつってんでしょーが!」

その時小さな呻き声が聞こえたかと思えば、倒れていた青年がばっと起き上がった。


「いきなり何をするのだ佐助っ!」


青年の目が少女たちの姿を見据えた。
こげ茶色の虹彩に、少し茶がかった短髪が揺れる。少女と同じくらいの年齢だろう、高校生3年生かそれ以上か、とかく若い男だった。

青年に目を向けたまま、口をぽかんと開けて呆然とする一家4人。

時代錯誤な話し方に、沈んだ赤の着物に羽織り。そして一番驚いたのが、その顔立ちだった。
―ジャニーズ?

「…ここは、どこであるのだ?」

しゃらり、と胸から下げた金属が音を鳴らす。心底不思議そうに男は首をかしげた。

「貴殿らはどなたでござるか?」

つられるように一家四人も首をかしげる。

「その言葉そっくりそのままお返しします」