短いの | ナノ
知識有りサスケ成り代わりが勘違いする

※知識有りサスケ成り代わりが勘違いされる、の続き






 大戦から早数ヶ月。誤解も・・・大体解けて、独房からも出れて、体もほぼ完治した私は実家でのんびりと過ごしていた。色々あって里抜けも必要に駆られてのことだったとはいえ、里抜けしたのは間違いないし、一時期は指名手配犯を(不本意ながらも)師事していた身だ。大戦での活躍など諸々のことを差し引いたとしても、それで、はい、許します!とはいかないのだろう。周りは任務や事後処理に追われているというのに、私は仕事を回されることもなく、兄さんや鷹メンバーとともにうちは地区に軟禁状態である。うわあ、なんて心休まるメンツなんだろう。これは長い間私のストレス耐性を試し続けた神から贈られたご褒美だろうか。ならば遠慮はしない。しっかりがっつりいただきます。
 うちは一族がかつて居住していたその地区は、兄さんが出て行って以来私一人で管理しており、さらに残された私が出て行ってからは誰ひとりとして足を踏み入れることがなかったらしくすっかり荒廃してしまっている。うちは地区に戻ったその日は、鷹メンバー含め、さらには非番だったナルトやらシカマルやチョウジたち同期含め荒れ果てたその場所を皆で大掃除した。そしてとりあえず使えるようになった我が家で、のんびりしているというわけだ。かつてはそれなりに賑わっていた通りも今となっては猫が通るくらいのもので、その静けさに未ださみしさは隠せないが、何年も一人でこの地区に暮らしていた私にとっては、ここに兄さんがいて、ついでに心を許せる数名がいるというだけでも嬉しいことだった。

 そうやって、つかの間の平穏を楽しんでいたというのに。
 「ハナコーーーーっ!!」
 静寂を破るは嫌というほど聞き知った声。・・・いや、私が知っていた頃よりもいくらか男らしくなっているか。
 里に戻ってきてからそれはもう嫌になるくらい聞いたその声は、今日もうちは地区の静寂を切り裂いてこちらまで届く。
 一緒に縁側でお茶を飲んでいた兄さんや奥で昼食の後片付けをしていた重吾、庭で刀を振るっていた水月にそれに突っかかる香燐の全員が、またか、という顔をして声の方向を見たあと、私を見た。

 「・・・なに」
 湯呑から口を話して尋ねれば、にたあ、と水月の口元が上がった。
 「・・・いやあ、随分ご執心なようで微笑ましいなあ、と」
 「何が微笑ましいもんか」
 湯呑の水面に映る自分の顔は非常に不機嫌そうである。里に帰って来てからというもの、サクラやナルトといった元同班の私へのくっつき具合と言ったらひどいものであった。私が少しでも傍を離れようものなら軽いパニックを起こすし、またいなくなるのではないかと常に不安を感じていたようだった。詳しくは追々語るとして――しばらく時間をおいた今となっても、未だ昔のような状態には戻っていない。特にその傾向が強いのがナルトであった。
 はじめこそそれに付き合っていたが、 そろそろ私の身が持たない。いい加減まいってしまって一度やつが来た時に逃げ出して、二人でうちは地区中を追いかけっこして回ったのは記憶に新しい。やつには仙術という厄介なものがあるため逃げたとしても直ぐに見つけられてしまうのだ。

 「おっす!また来ちった!」
 「そうか、帰れ」
 片手を上げて陽気に登場したのは先ほどの声の主、ナルトである。
 「んなこと言うなよ、ハナコ!」
 ナルトはめげずに兄さんと私の間に割って入り、私の肩を抱く。言い忘れたが、ナルトの両腕は健在だ。勿論、私の両腕も。なぜならば、私があの大戦後の命をかけた大喧嘩というイベントを全力で回避したおかげである。わたしはあんなはた迷惑な喧嘩を繰り広げる予定は毛頭ない。
 思えば結局私がまともに回避できたフラグは、兄さん死亡フラグとこの世紀の大喧嘩フラグくらいのものであった。・・・こんなにフラグ回避に必死になって今まで生きてきたというにも関わらず。
 「近い。私と兄さんの間に入るな」
 「なんだよケチ」
 「うるさい帰れ」
 「ウスラトンカチー」
 「それはお前だ」
 べったべたとくっつきたがるナルトを押しのける。・・・が、くそ、こいつ無駄に成長しやがって!!下忍になったばかりの頃は、私やサクラよりも低かったその身長は伸び、今や骨格も筋肉も女の私とは比べ物にならない。私は必死に押しのけようとするのだが、ナルトの体はビクともしない。必死な私に気づいて、にたりと余裕の笑みでさらに力を加えてくる始末だ。腹立つ!
 「・・・不法侵入者め・・・」
 そもそも許可なしに他人が家の庭にずかずか入ってきていること自体が問題だ。しかるべくはきちんとアポイントをとった後、約束の日時に玄関の前に来て、チャイムを鳴らし、家主の許可を取ってから家に入るべきであるのだ。
 と、考えているうちにも不法侵入者もといナルトは勝手に私の湯呑を手に取りさもそれが自分のものであるかの如く飲み干した上に、重吾におかわりの催促までしているではないか!ついでに香燐が奥で「それうちが狙ってたのに!!」とか言っているがそちらは聞こえなかったことにしておく。
 「お前どれだけ図々しいんだ!重吾、こいつに茶など淹れてやる必要はない」
 「けちんぼ!俺だってさっきまで任務で疲れてんだ」
 「うるさい。ならさっさと家に帰って休め」
 言った途端にナルトが押し黙り、ぐう、と呻いて顔を顰めた。

 「・・・っハナコの、馬鹿ああああああああっ!!」
 かと思ったら、叫びながら走って出て行った。近くにいた私の鼓膜がしばらくビリビリと震える。・・・なんだあいつ、嵐のようだったな。
 「・・・あーあ、かわいそうに」
 腰に手を置きながら水月がため息混じりに零す。明らかに私に向けられた視線に私の眉間に皺が寄る。
 「・・・なにが言いたいの」
 「だってさ、彼、任務後で疲れてるのに態々ハナコのところに来たわけでしょ?」
 「らしいね」
 「・・・・・・ちょっとー・・・ここまで言ってまだわからない?」
 「何が」
 「・・・それだけハナコに会いたかったってことでしょ」
 「・・・」
 「それが『さっさと家に帰って休め』なーんて言われちゃあねー」
 あー、カワイソ。と水月が続けるのを片耳で聞きつつ私は物思いにふける。・・・そうか、つまり。
 「・・・・・・あいつはまだ、私を信用していないんだな・・・」
 「・・・・は?」
 「わかっている。事情があったとはいえ、確かに私は里を裏切り、あいつらを裏切るような真似をした。その責は覚悟の上だ。・・・だが、正直、あいつに見張りの真似事をさせる程とは思っていなかった・・・」
 ナルトは私がまた裏切らないか、いなくならないか、心配で様子を見に来ているのだろう。・・・そんな人を疑うような真似、ナルトには似合わないというのに。それをさせてしまっているのが自分だということが歯がゆい。・・・これが私があの日里を抜けた代償なのだろう。
 重いため息を吐く私に、水月たちのじっとりとした視線が絡みつく。
 「・・・・ボク、あいつに同情しちゃうよ・・・」
 「・・・そう、だな・・・」
 水月の言葉に、重く私が同意を示す。私たちの会話が微妙に噛み合っていないのを、私だけが知らなかった。





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