「独奏」



※オリキャラが出しゃばります。



『犯人は、簡単なトリックを使ったのだ。』


 平井龍太郎は、この4月から警視庁捜査一課強行犯三係に配属されたばかりの刑事だった。人一倍正義感が強かったため、刑事になるのが子供のときからの夢だった。警察学校を卒業して、夢だった仕事に就職できた。

 そんな平井だったが、彼は現在連続殺人事件の捜査をしていた。何人も殺されている大きな事件で、対策本部が作られた。たくさんの刑事が集められている中、平井は一人の少女が目に入った。人形のように可愛らしい少女で、セーラー服を着ていた。隣に座っている先輩の佐藤に彼女のことを聞く。彼女は工藤理世と言って、推理小説家工藤優作と元女優の藤峰有希子のお子さん。彼らには双子の子供がいて、その妹の方。中学一年生ながら大人顔負けの頭脳の持ち主のようで、目暮警部が捜査協力を依頼して警視庁に良く出入りしているらしい。平井はまだ見たことがなかった。

 彼女は容疑者の写真が貼ってあるホワイトボードの前にたち、マイクを持たされ、堂々と推理したことを話している。すると、一人の容疑者の写真を指差した。


『彼の動機は、10年前に愛する娘が無惨に殺されたからだ。』


 刑事たちは唖然としていた。目暮警部と松本警視は彼女の推理に納得がいっているようで頷いていた。彼女は証拠がどこにあるかまで話すと、松本警視にマイクを渡す。松本の命令で刑事たちが出て行った。平井は目暮警部に呼ばれ、彼女を家まで送っていくことになった。松本警視に撫でられお礼を言われている少女を見つめる。無表情で頷く彼女は、さらに人形らしさを際立たせていた。


平井「じゃあ行こうか。」


 精一杯人の良い笑顔を作り、手を差し出す。彼女はちらっと平井を見る。その顔にどきっとした。どうやら警戒されているようで彼女は一つ頷くだけで、平井の手を取らず歩き出した。警視庁内部を熟知しているようで彼女の足取りに迷いはなかった。


萩原「おっ、理世ちゃんじゃん」

『けんじさん!』


 彼女はその声に一目散に走って行った。爆弾処理班の萩原研二だった。平井は一度しか喋ったことがない。今までずっと無表情だったのに、楽しそうに笑ったことに平井は驚いた。萩原は走ってきた彼女を抱き上げる。きゃっきゃっ楽しそうに戯れている。


『けんじさん、今日出動ないの?』

萩原「ああ、今日は訓練なの。理世ちゃんは?事件解決帰り?」

平井「今、連続殺人事件を解決していただいたばかりなんです。」

萩原「お、平井じゃねぇの。理世ちゃんさすがだね。」


 そう彼女の頬にキスを落とす。平井はぼっと顔が赤くなり視線を逸らした。なんだか見てはいけないものを見た気がした。美形同士の絡みって美しいなと思った。萩原は「ちゃんと送り届けろよ」と平井に言うと去ってしまった。男の平井から見てもかっこいい人だった。彼女の家まできちんと送り届けた平井だったが、彼女は何を聞いても一言も喋ってくれなかった。


 平井が警視庁に帰ると、連続殺人事件は解決したと言われた。彼女の言う通りだったようだ。犯人は10年前に殺された娘の復讐でこの犯行に及んだと自供したらしい。平井は佐藤に彼女のことを聞いてみた。


佐藤「え?理世ちゃん?」

平井「はい、一言も喋ってくれなくて」

佐藤「あー、あの子私にも喋ってくれないのよ。目暮警部くらいかしらね?彼女のお父さんと友人らしいから。」

平井「へー」

佐藤「でもなんで?」

平井「い、いや、あのですね」


 平井は佐藤に帰りの車に乗る前に会った萩原のことを話した。


佐藤「私も詳しくないんだけど、確か理世ちゃん小さい頃から誘拐やストーカーの被害が凄かったらしくて人間不信になったとか」


 顔が良い人間は大変なのだろうか。平井には縁がない悩みだなと他人事のように思った。まあ他人事には変わらないのだが。少女とは、それから縁がなく捜査には関わっても喋ることはなかった。彼女は相変わらず捜査以外のことを目暮警部以外に喋りはしなかった。

 非番の日だった。彼女もいなく、実家暮らしの平井は暇だった。忙しい毎日だから家でゴロゴロしたかったのだが、母親に追い出され街に出ていた。すると、平井の目に止まったのはこの前から荻原と一緒にWエースと言われている松田陣平と工藤理世が歩いていた。二人とも顔が良いからか目立っていた。「撮影かな?」と遠巻きに見られていた。確かに歩く姿は芸能人のようだった。手を繋ぎ楽しそうに歩く二人に、平井は見えなくなるまで見つめていた。

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